12-59 闇玉
分ティ人が狩山の頂に立ち、両の掌を上にして闇玉を作った。ボンと打ち上げたソレは高盛崖と同じ大きさになり、山守の頂より高く上がる。
「うっひっひ。闇、広げまぁす。テイッ。」
無音で爆発し、小さな闇の矢が放射状に射出。霧雲山に闇が降り注ぐ。
「ヒャッホォイッ、見っけ見っけ見っけ。」
祝の力を持つ人、いっぱい。
「ん?」
鎮野と大泉だけは何をドウしても探れず、イライラ。
「欲しいのは先読なのに。」
居るには居る。見つけたが、祝辺に勝てる気がシナイ。
「もっかい。」
第二弾、発射準備開始。
霧雲山では珍しいが、霧雲山の統べる地では少ないダケで珍しくはない。それが先読の力。
霧雲山の中で、となると霧山で生まれる。なのに霧山の継ぐ子が守られているのは、とつ守が睨みを利かせているから。
とつ守は草木の声が聞こえる隠で、鎮森の民に寄り添っている。霧雲山の中では隠し事が出来ない、と言っても過言では無い。
もし霧山に禍を齎すなら、その可能性が有るダケでも願うのだ。『消えれば良いのに』と。
とつ守が願えば草木が、鎮森の民が動く。何れも祝の力を持たない人には見えない、聞こえない、分からない。
鎮森の民は隠、闇堕ちした隠もチラホラ。草花の毒を強めたり、病を重くするナンテ序の口。
「強くなったモノだ。」
上空を覆う禍禍しい闇。祝辺の獄に入れた呪い祝、テイと同じモノを抱えている。
「狩山か。」
テイから切り取られた闇が望月湖に流れ込み、融けて一つになった。水から上がったソレが巫の体を奪い、気の緩みに付け入ったと。
「フッ。」
闇を吸い上げブクブク太って、祝の力を求めたか。
「とつ守、悪い顔ぉ。」
ふたつ守、ぴょんぴょん。
「とつ守、怖い顔ぉ。」
みつ守、ぴょこぴょこ。
「とつ守?」
ふたつ守、パチクリ。
「とつ守っ。」
みつ守、ドキリ。
「お仕置き、どうしましょう。」
ヒッ。
「あの闇のようにパァン、しますか?」
ブンブン。
「では、逆さ吊り。」
涙目でブンブン、ブブン。
「ごめんなさい。」
「許して。」
ふたつ守、みつ守。ガタガタぶるぶる。
「社に御戻り。」
「ヒャイ。」
『ピュゥン』と聞こえそうなホド、速足で逃げた。
分ティ人が狙うのは親から子へ受け継がれる、とても強い先読の力。
霧雲山の統べる地に有るのだから、この山の中にも有るだろう。そう信じ、グルグル巻いて大きくする。
綿菓子のように柔らかそうだが、甘くも美味しくも無い。
綿菓子は加熱した白粗目を遠心分離機を利用して、糸状に噴き出させてフワフワの綿状にした菓子。
闇玉作りも似たようなモノ。糸状の闇を渦の中央から出し、巻いて大きくしている。
「そろそろ読むかな、ここのつ守。」
先読の力を持つ隠の守、祝社の自室で悶絶中。