12-57 私は良村の子
大泉社は水中と地上にあり、社の奥で繋がっている。
水を操る力を持つ社の司が突然死すれば、地上の社が水浸し。いや吹っ飛ぶ。ソレを防いでいるのが、強い守りの力を持つ祝。
その祝が睡魔や疲労でクラクラすると、地上の社が・・・・・・。というワケで、強い清めの力を持つ禰宜も気が抜けない。
大泉の社の司、センは血液も操れる。敵に実体があれば略、無敵。禰宜と祝が手を組めば、祝辺の守でも徒では済まない。
「エッ。」
「わぁ。」
「モフモフ。」
川亀が首をヌッと伸ばし、妖狐と妖犬が守るように寄り添っている。
『放たれた社憑きが人の子に憑いた』とは聞いていたが、こんなに憑いているとは思わなかった。
いやソレより何だ。守られ子の胸元から感じる、とても清らで強い力。
強い先読の力を生まれ持つと聞いた。というコトは、タエの力では無い。
透き通った石に清めと守り、二つの力を込めれば割れるだろう。だから、いや待て。良村には大蛇神の愛し子が居る。
・・・・・・愛し子の力か!
「ウッウン。」
見せて、なんて言えないわ。
「ようこそ、大泉へ。」
それ、どうなってるの?
「さあさ、こちらへ。」
私も女、チラッとで良いから。なぁんちゃって。
「野呂の狩り人、オウとヒロの倅。タラです。」
三人の視線がタエの胸元に注がれている事に気付き、名告を上げる。戦場じゃナイけどネ。
「大泉の社の司、センです。」
敵認定された事に気付き、慌てて自己紹介。
「大泉社の禰宜、イズです。」
『この子、タエの事が好きなんだな』と思いながらニコニコ。
「大泉社の祝、モトです。」
『モフモフ好きに悪い人は居ないわ』と思いながら、にこやかに挨拶する。
一隠二妖の後ろに居たタエが、怖ず怖ずと前に出た。マルの守り袋を衣の上から軽く握り、ニコリ。
「添野で生まれた良村の子、タエです。」
そう、私は良村の子。大泉が嫌になったら鎮野に行けば良い。隣だって聞いたし、大木を通せば話せるわ。
「・・・・・・あのぉ。」
何なの、どうして私の胸をジロジロ見るの。そんなに大きくナイわよ。
「何か聞きたい事でも?」
大泉三人衆の影を縫ってから、シナが歯をカチカチ。噛む気マンマンである。
「怯える事は無い。」
と言いながらクル、大泉組の影踏みを開始。
「まぁ落ち着け。」
と言いながら、狐火を展開するフサ。
「大泉の村長、ミチさんに会わせてください。」
と言って微笑むタラ。
野呂の山長、ソウが『大泉に着いたら、村長のミチに会え。きっと力になってくれる』と言っていた。
社の人は他と少し違っている。でもココの人たち、社の人だけカモだけど怪しい。とってもアヤシイ。
「オウ、着いたか。遅くなってすまない。大泉の村長、ミチだ。祝の力は無いが見えるぞ。アッ、申し訳ありません。川亀さま、狐さま、犬さま。ウチのが何か遣らかしましたか?」
大泉社トップ3、真っ青。