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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
暗風編
1136/1589

12-54 片目じゃなくても


大急ぎで出立しゅったつの準備を整え、タエとタラが野呂社のろのやしろに戻って来た。祝の力を持たない人には姿を見せない後見役、一隠二妖が姿を現す。



『影縫い』と『影落とし』を得意とする川亀のおに、飯野の社憑きだったシナ。『狐火』と『幻術』を得意とする妖狐、茅野の社憑きだったフサ。『影踏み』を得意とする妖犬、添野の社憑きだったクル。


揃って前、社憑き筆頭。その実力は折り紙付き。






「死ぬなよ。」


タラに弓の扱いを叩き込んだ父、オウ。


「生きて幸せを掴みなさい。」


タラに罠の張り方や毒の扱いを叩き込んだ母、ヒロ。


「ハイ。」


オウとヒロの末っ子、タラ。






狩人かりゅうど夫婦の才能を受け継ぎ、英才教育にも耐えた美少年は恋に落ちた。一目惚れである。相手は添野で両親と死別し、苦難の道を歩む事になったタエ。



大泉に引き取られる事が決まっている。強い祝の力を持っている。隠と妖怪が、後見うしろみとして憑いている。


そう聞いても引けない、諦められない。






「タラ、もう野呂に戻る事は無いだろう。」


「はい、祝。解っています。それでもオレ、タエと生きたい。」


心を読め、読心術も使えるタタが頷く。


「そうか。国つ神から放たれ、社憑きから後見になった皆さまが御守りくださる。がな、タラ。戦うより逃げる事を考えろ。」


「はい。」


「タエが好きなら死ぬな。」


「ハイッ。」






靄山もやまからやしろを通って、靄山隠もやまおにの精鋭が到着。直ぐにタエとタラを連れて渓山へ。警護を担当するのは靄山隠、闇から隠蔽いんぺいするのは一隠二妖。


ゆっくり十数えてから、鷲の目が野呂のろの子を連れて滝山に向かう。それから二十数えてから、狩頭かりがしらが見習いを連れて氷皐山きよさわやまへ。



同時刻、野比のびも動いた。


靄山隠が野呂に到着する少し前、木菟が狩り人の子を連れて滝山へ。ゆっくり十数えて、狩頭が見習いを連れて氷皐山へ。


さらに二十数えてから、食べ物と織物を担いだ忍びの子が匿里山のくりやまに向かった。



野比の南に聳える匿里山は『秘境』と言って良いだろう。山中のアチコチに隠れ里があるが交流は殆ど無く、余所者を酷く嫌う。


ただし谷河の狩り人と木菟ずく、鷲の目は例外。






「・・・・・・。」 パチッ、パチパチ。


渓山から戻った靄山隠が、祝にまばたきで『心を読め』と合図。


「・・・・・・。」 パチン、パチパチ。


ウインク出来ないタタ、両目を瞑って『はい』と応答。



タエとタラを無事、嘆き溪の洞に送り届けた事。万が一に備え、狐火の中に居る事。渓山を出るまで清らだったと聞き、ホッとする。



「では、これで。」


「はい。ありがとうございました。」


通心終了後、靄山隠が社の奥へ。






深深ふかぶかと下げた頭を上げて直ぐ、ゾワワワワァッ。ティの闇がブワリと広がった。



「うわぁ。」


水を操る力を持つ、ミオが眉をひそめる。


「濃いですね。」


風を操る力を持つ、カイが呟く。


「ギモヂワルッ。」


社の司と禰宜ねぎには耐えられても、祝にはキツかった。


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