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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
暗風編
1135/1588

12-53 急げ


信じる、信じるよ。心の底からタエの事を思っている。好きだ、契ろう。じゃなくて待って。お願いだから、うん信じてる。


信じてるよ、でも待って。




「祝からね、少しだけど聞いてる。タエ。」


「はい。」


「好きだ。」


・・・・・・。


「オレ狩り人だから、タエを飢えさせない。寒い夜はギュッと抱きしめて凍えさせない。子が生まれても生まれなくても、ずっとタエを先に守る。」


・・・・・・?


「タエ。二人で野呂のろを出て、大泉で死ぬまで暮らそう。だから親に言う。野呂社のろのやしろの人にも言う。言ってから野呂を出る。良いね。」


コクン。


「野呂山から高盛崖たかもりがけの登れる所まで、大人の足で二日。崖を登って森を抜けて山を登って、湖をグルっと回って下る。子の足では十日。いや、もっと掛かるよ。」






上空から見ると良く解る。山守は崖に守られた天然の要塞。山守と祝辺はふりべを割った、あの地震で隆起したのだ。



高盛崖の南には恐ろしく深い合繋谷あつぐだにがあり、遠回りしなければ行けない。鎮野しづめの平良ひらから鎮森しづめもりに入って冀召きよしを見つけ、分川くまりがわに沿って南へ。


十日どころか二十日は掛かるだろう。






「鎮森は心の強さや力を厳しく試す、人を通さない森。祝辺の守を選ぶ森らしい。」


祝社はふりのやしろの継ぐ子を放り込んで、生きて戻った子を人の守にするのよ。こうが言っていたわ。


「死ぬのは怖い。けどオレ、タエとなら死んでも良い。」


「私は嫌。」


ガーン。


「タラ、私が好きなら、離れたくないなら生きて。『死んでも良い』なんて言わないで。キライになるわよ。」


「死ぬのは怖い。けどオレ、タエと生きる。タエより長く生きるから、お願い。キライにならないで。」


言い直した。


「はい。」


ニコッ。




『惚れたら負け』と言うけれど、ボロ負けだ。なのにタラ、とっても嬉しそう。タエはタラを軽んじて、言いなりに従わせたりシナイから安心してネ。






「えっ・・・・・・と、エッ?」


野呂の社の司、ミオ。パチクリ。


「山守の、ねぇ。」


野呂社の祝、タタ。赤べこ状態。


「はっはっは。」


野呂社の禰宜ねぎ、カイ。笑うしかナイよね。


「笑うしかアリマセンよね。でも今は、逃げずに考えましょう。


野呂社、祝人頭はふりとがしらマヨ。冷静だ。






呪い祝テイの闇が、人には勝てないバケモノが野呂に押し寄せる。狙いはタエ。強い先読の力を持つ人を探そうと、闇を広げた。


急いで大泉に行かないと、野呂が滅びる。多くの人が命を失う。






「タラ。今すぐタエを連れて、渓山たにやまに入りなさい。」


「ミオさま。滝山ではなく、渓山ですか。」


「渓山です。『嘆き溪』にはほらがあって、祝の力を持つ人が奥に進むと水が光ります。あの中は清らで、どんなに強い呪いも届きません。カイ。」


「はい、ミオさま。タラはからの水袋五つ、大袋いっぱいの食べ物を背負子しょいこに乗せなさい。タエ、良山よいやまから持ってきた荷を忘れずに。急げ。」


風を操る力を持つカイが、笑顔から真顔になった。


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