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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
暗風編
1133/1588

12-51 開放されたなら


タップリと闇を吸い込んだティ贔屓筋ひいきすじから差し入れられたアレコレを前にウットリ。


『供物を捧げられるナンテ』と、心の中で大燥はしゃぎ。



誰にだって悩みがある。不安を抱えたり、何かに恐怖したりネ。そんな負の感情を吸収して力を蓄える分ティを、ただ一人ジッと見つめる御婆。






「チュッ。」 エッ。


分ティ人の闇をかじり、逃げ去ろうとした鼠ん。御婆の鋭い視線にタジタジ。


「どうぞ、御持ちください。」


山在やまきの社の司、カヌがうながす。ペコッと頭を下げて駆け出した鼠んを見送り、微笑んだ。


「何が居たんですか。」


神降ろしや神懸り成功率100%を誇る御婆でも、祝の力が無いと見えないモノは見えない。


「鼠さまです。」






山背やましろの社憑き、鼠ん。沼垂神ぬたりのかみから特命を帯び、高難度の技を次次と決めた。山背の祝お手製の袋に入れ、受取に来た寿ほぎに渡す。



沼垂の社憑きは通いだが元、留萌るめの社憑き。その全てに無駄が無い。


闇耐性を持つ犬の妖怪は野良経験を活かし、社憑きが敬遠するような任務でも最短で処理。わんダフル。




「カヌよ、見よ。」


「はい。」




御婆の言いたい事、良く分かる。軟体動物のようにフニャンフニャンになり、目から光を失った村人たち。そう長くは生きられない。


苦悩、苦痛から開放されたなら、それが死でも洗脳でも幸福か。残された者が後悔の念に駆られ、圧し潰されたとしても。




「人は弱くてシブトイ生き物です。長く苦しみ、嘆くでしょう。けれど何時いつか立ち直り、真っ直ぐ前を向く。私はそう、信じています。」




カヌの言葉を聞いた御婆が黙って頷き、歩き出す。


虚ろな瞳で恍惚とする信者たちに目もれない。戦場いくさばでも無いのに死屍累累ししるいるい、遣る瀬無い思いでイッパイだ。


どのむくろも幸せそうな顔をしている。



そんなにつらかったのか、苦しんでいたのか。生きて幸せになるより、死んで楽になる事を選ぶなんて。そんなに生きにくいのか、山在は。狩山かやまは。






キョロキョロ。キョロキョロキョロ、うん。


「いっただっきまぁす。」


頭、パッカァン。




真っ二つに割れた頭部から闇が、闇の手が幾つも伸びる。骸を掴んでは引き寄せ、掴んでは引き寄せて納めてゆく。


美味おいしそうに、嬉しそうに次から次へヒョイ、ヒョヒョイ。



刃に変化させた脳髄を高速回転させ、嚥下えんげしているように見える。送り込まれた食塊しょっかいは細かくかれたか、はたまたり潰されたか。


いづれにせよ原形をとどめてイナイだろう。




「ふぅ。」


腹をさすって、ポンポン。


「歩くか。」


腹熟はらごなしに散歩に行く。





監視員は山在の精鋭ダケではない。狩山中から集められた隠が、分ティ人を其処彼処そこかしこからジィっと見つめている。


アヤシイ動きがあれば直ぐ、妖怪に応援要請。



妖怪の前に出ているのはおに。隠はどんな時も、何があっても隠だから。


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