5-40 当たって砕けろ
あれこれ話していると、社の司が。
「祝がお呼びです。こちらへ。」
「シゲよ。これから、どうする。」
「村はずれに暮らす者らを連れ、村を作ろうと思います。」
「村、とな。」
「はい。」
「で、どこに。」
「まだ決めて居りません。」
「そうか。今から作るとして、冬を越せるか。」
「家を建てられるだけの藁を、持ち出せば・・・・・・。祝、よろしいでしょうか。」
「申せ。」
「鮎川沿い、東山と飯田の南、森川の奥にある山。その山に、村を作る許しを頂きたく。」
禰宜ロク、ススッと。
「あの辺りの山に、村はありません。」
「山に、他に村がなければ、良い。」
「ありがとうございます。」
シゲとシンが見合わせ、笑った。
「で、その村。名は。」
「まだ、決めておりません。」
「そうか。良い村にせよ。」
「祝、決めました。良村にします。」
「そうか。良村か。」
「はい。」
「言ってみるもんだなぁ。」
「まったく。」
「じゃっ、帰るか。」
「早く出なきゃな、早稲から。」
「ああ、そうだな。」
当たって砕けろ作戦、大成功!
「みんな、落ち着いて聞いてくれ。ここに、いや違う。早稲の村に、三鶴と玉置が攻めてくる。」
ザワザワした。そりゃそうだ。どちらも血の気が多い。どんなに前向きに考えても、勝てない。
それに、足りない。今、残っている大人は、五人。シンを入れても、六人。戦えるのは、シゲ、カズ、ノリ、コタ。コノとシンは、戦えないだろう。
戦に駆り出されたまま、誰も戻らない。なのに国が、しかも二つ。
逃げよう。でも、どこに。山に逃げ込んで、それから。・・・・・・見つかって、殺される。
「早稲の村なんて、どうでもいい。オレはそう思う。だけど、ここは違う。」
シゲが、ゆっくりと見まわす。
「オレたち『早稲の他所の』人だからって、虐げられてる。だから、見捨てる。」
何度も頷く子。溢れそうになる涙を堪え、上を向く子。目を輝かせる子。いろいろ。
早稲は、逃げ込んで来た人を、苦しめるだけ苦しめた。ここにいるのは、その生き残り。
「村外れに暮らすオレたち、オレたちの村を作る。」
ザワザワとした。まだ、誰も・・・・・・。
「他の村へ行かされた人たちは、死んだ。」
シーンとなった。
「そんな!父さんは? 父さん、帰るって。帰るって言った! オレ、オレ。」