12-47 エロ狐?
山守周辺を大捜索した結果、いろいろ判明。
先ず、セイと明日は親類。二人ともマシと詐の娘で、山守に引き取られたカズが最初に産んだ倅、スミの末裔。
山守の呪い祝テイはカズの孫なので、テイの遠縁でもある。
次にテイの父、セイは九尾の白狐の血を引く呪われ子だった。
白狐は超がつく美形揃いで変身能力も高く、目の色も髪の色も薄い。薄いとはいえ黒目なのに血の管が透けて見えるのは、その祖先が白子だから。
全ての条件に該当する狐は一妖。白夜間神の使わしめ、雪花。
「そうですか。」
スゥっと目を伏せ、一言。
雪花はハッとするホド美しい、鎮の西国で生まれた野狐のオス。
放浪中に九尾になり行き倒れ。黒狐神に保護され、狐泉社で療養する。回復後、使わしめを募集していた白夜間社の採用面接を受け、使わしめとなった。
命名したのはコッコで、『苦しむ全てに等しく救いの手を差し伸べ、その心に花を咲かせる妖怪に』との願いが込められている。
「私の尾が四つ、いや五つの頃でしょうか。人の子に惚れられまして。」
放浪中なので、衣の胸元が開いていた・・・・・・カモしれない。
厚くはないケド薄くもない胸板と、ツゥっと撫でたくなる鎖骨がチラリ。思わずゴックンと生唾を飲み込んだ・・・・・・カモしれない。
長い睫に潤む瞳、吸い込まれそうな赤。白魚のような指が乙女の頬に触れ、囁く。『泣かないで』と。
その気もナイのに優しくするナンテ、罪な事をする?
いえいえ。派手に転んで大泣きする子を抱き起こし、衣の袖で涙を拭いました。ワンワン泣く子をあやしたんです。
え? バッチくありませんよ! 前日川で洗濯し、木の枝に掛けて乾燥しました。
「名はセリ。芹の花を摘んで渡したら、裾が開けるのを気にせず跳ねたのを覚えています。」
エロ狐? 酷いな、違います。
「涙が止まったので、そのまま別れました。中の西国、吉備の統べる地。親と暮らす娘です。」
初めて出会ったのは夏の頃。
「次に会ったのは真中の七国、瀬国。とは言っても、会ったのはセリの孫の子。奴婢でした。」
その娘の名もセリ。
母から『良い子にしていたら、いつか赤い目をした優しい狐様が撫でてくれる』と聞かされ、育ったそうな。
「『連れて行こうか』と思いましたが、人の子を養う事など出来ません。だから因幡に。『因幡社には国守になるのを断って、因幡神使わしめになった妖怪がいる』。そう聞いたのを思い出しましてね。」
人だった時は養蚕業に従事していたシラ。『妖怪の国守になって欲しい』と頼まれるも、戦闘向きではないのとキッパリ断った。
でも強いヨ。
「別れる時に泣かれまして。芹の花を摘んで『強く生きなさい』と手渡し、頬を撫でてから別れたのですが。」
また会います。
「人はなぜ、あんなに酷い事が出来るのでしょう。」
剛国の兵に『オレと契れ』と言い寄られ、転がるように走り去る。
社の離れに飛び込み、ブルブル震えるセリ。落ち着くのを待って話を聞いたシラ、激怒。
近くをウロウロしていた男を取っ捕まえ、『去れ』と一言。腰を抜かして逃げた男は・・・・・・セリを攫った。
悲鳴を聞いて駆けつけたのは、赤い目をした白くて大きい狐サマでした。