12-45 嫌なカンほど良く当たる
神口、生口、死口に関係なく、口寄せが済んだら落として割る。
袋に入れて持ち歩いたり、紐を通して首飾りにしたり、身分証明書代わりに使う事もあった。
「この形、間違いありません。山守の狩り人の子、マシが生まれた時に作られた首飾りです。」
ノラーの分析能力は半端じゃない。
科学捜査研究所、いや科学警察研究所も真っ青な水準。鍛え上げられた鼻と耳で、遺伝因子鑑定しなくても個人を特定。それも、十秒以内と超高速。
夜久が破いて密封保管していた布、ココ掘れワンワンで発掘された骨、土器片。これらから検出された遺伝情報が全て一致。
つまりマシは、詐の第一子の父!
「マシの父は狩り人のマス、母は巫のエン。」
マスの父も狩り人で祝女の倅、母は巫で覡の娘。エンの父は樵で巫の倅、母は巫で祝人の娘。
「マスは祝女の孫、エンは祝人の孫ですが継ぐ子ではありません。祝の力を持たずに生まれたのでしょう。」
ピョコッ。ピョコピョコッ。
「ふたつ守、みつ守。」
ひとつ守の後ろに隠れ、顔を出しては引っ込めていた隠の守。『何でしょう』という顔で瞬き。
「マスの婆、弱いケド先見の力が有った。」
ふたつ守、ニコリ。
「エンの爺、弱いケド先読の力が有った。」
みつ守、ニコリ。
「もしかして。」
ひとつ守、ピクピク。嫌なカンほど良く当たる。
「マスにもエンにも無かったケド。」
対象に闇を植え付け、支配する力を生まれ持つ、アブナイ幼女は遣らかした。
「マシには、どっちも弱いケド有った。」
対象に闇を植え付け、操り動かす力を生まれ持つ自称、穏健派も遣らかした。
「確かめたモン。」
「ネ。」
ふたつ守、みつ守。見合ってニッコリ。
「あぁぁ。」
ひとつ守、脱力。額に手を当て首を振る。
ひとつ守には強い清めの力がある。
ふたつ守とみつ守には闇の力があり、チョンと植え付ける事でイロイロ判る。そんな力を生まれ持ったのか、どれくらい使えるのかナドなど。
祝女と祝人の曾孫は微弱だが、先見と先読の力を持って生まれた。
そのマシと詐の間に生まれた娘に、山守に引き渡された嬰児に祝の力が有ったなら殺されず、継ぐ子として育てられただろう。
「マシの娘が山守に引き取られたとは・・・・・・。」
「ひとつ守、その子カズだよ。」
みつ守がコテンと首を傾げ、パチクリ。
「末見の力を生まれ持った、あのカズだよ。」
ふたつ守、ひとつ守を見つめてニコリ。
「あぁ、居たな。」
山守のマスとエンの倅で、微弱だが先見と先読の力を持って生まれたマシ。留萌の巫になる前の詐に誘惑され、骨抜きにされた。そうして生まれた私生児がカズ。
先見に先読、母譲りのカンの良さが融合して出現したのが末見の力。簡単に言うと未来予知能力を持って生まれた。
体の強い子を産むため、十一歳で妻子持ちの狩り人を誘惑。十二歳で末見の力を持つ男児、スミを出産。十四歳で闇の力を隠し持つ、妻子持ちの狩り人を誘惑。
十五歳で人の心を惹き付けて操る、闇の力を持つ女児ヒサを出産。恋愛を楽しみながら女手一つで二児を育て上げ、天寿を全う。
隠になって直ぐ、ひとつ守に清められた。