12-44 精鋭ぞろい
定例の会議終了後、休憩を挟んで調査開始。
第一班、坦の地。
土に埋もれた留萌社の発掘、及び使わしめ夜久の遺品を捜索。
第二班、同じく坦の地。
御隠れ遊ばした坦神の使わしめで現在、坦の地の保全管理を担うアラ。
坦社の祝で死後闇堕ちするも現在、清めの力と引き換えに得た闇の力でアラを支える鎮守ナヲ。
両名に対する事情聴取。
第三班、狩山。
狩山神の使わしめ明寄、山背の社憑き鼠ん両名に対する事情聴取。狩山内を徹底調査。
第四班、同じく狩山。
山背神の使わしめ蒐を立ち合い隠とし、山背各所に存在する鼠んコレクションルームを捜索。
捜査員に収集品は『物ではなく、宝』として扱うよう周知徹底。
第五班、山守。
祝社に協力を求め、詐の娘が山守に引き取られてから死ぬまでを調査。
並行して坦から移り住んだ山守生まれ、山越育ちの男に関する情報を収集。
第六班、嚴山、流離山、汊眺山。
嚴山神の使わしめ黄丸、流離神の使わしめヒオ、汊眺神の使わしめ獒に対する事情徴収。
なおヒオは特別任務中につき、社憑きプルンと交代してから聴取する。
「山守で生まれ、山越に移り住む男は多い。」
ひとつ守が唸る。
「坦山が崩れる前、山越や霧山とも繋がっていました。」
坦山は山越や霧山より標高が高かった。だから呑み込んだのだ、噴水くらいの高さだった留萌を。
「四つ足でも滑るような山でしたから、鎮森を抜けなければ辿り着けませんでしたよ。」
アハハ。
「『山越でも思うように暮らせず、移り住む者が多い』と、坦の長と山頭から聞いた事があります。」
坦に限らず、あの山津波に呑まれた人は全員死亡。坦神の使わしめアラ、留萌の社憑き寿は生き残ったが妖怪。どちらも人では無い。
「おや、もう。」
坦の地から飛んできた使い烏に第五班班長、集水の社憑き彩が驚く。
「あの・・・・・・。」
彩は透明な軟泥状の妖怪。集山で死んだ動物の隠が融合して妖怪化したので、人の姿に化けても四つ足で歩いてしまう。
今回は犬が強く出て、お座り状態。ひとつ守が戸惑うのも無理はない。
今回の作戦、参加したのは人の世の精鋭ダケでは無い。人の世から隠の世に移り住み、長く生きる妖怪のために組織された組合も加わった。
その一つが発掘調査を専門とする『鼴鼠組』、通称モグモグ。
農作物に有害だからと人の世で害獣指定された事を嘆いた鼢が、隠の世におけるモグラの地位向上を目的として組織した調査隊。
全員ムッキムキで、幼虫より鶏肉を好む。
「ひとつ守。こちら、見覚え有りませんか。」
シュタッと立ち上がり、土器片を差し出した。
モグモグが発掘した夜久の遺品から、重要な手掛かりを得たのは分析調査を専門とする『野良組』。通称ノラー。
留萌社埋没現場の南東、坦社埋没現場の北西で『ココ掘れワンワン』を発動。
研ぎ澄まされた嗅覚と聴覚を活かし、隠の世に貢献したいと組織された野良組。
隊員の多くが人の子を守って死亡し即、妖怪化。負傷した飼い主を家族の元へ送り届け、黙って隠の世に移住した。
組織名は『山ではなく野で生きていた』事に由来する。
「ん、これは。」
ひとつ守が見開く。
「これは山守の巫が使っていた、魂呼びの鐘です。落として割って、お守りにしていました。」