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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
暗風編
1123/1588

12-41 今でも


元は清めの力を持つ、坦社たいらのやしろの祝だったミヲ。


離れではた織り中に地が揺れ横転し、が胸に刺さった直後、倒れてきた柱が後頭部を直撃し死亡。



山が崩れ、生き埋めになった人のうめき声、助けを求める声を聞きながら闇堕ち。妖怪化。清めの力は失ったが肺を包んで圧迫し、窒息させる闇の力を得た。


人のときに残ったのは消滅するまで、鎮守しづめもりの務めを果たすため。






寿ほぎよ、ワフの飼い主の名は。」


エッと、ま・・・・・・。何だっけ。


「思い出せません。けれど確か夜久やくが『いつか、何かに使えるだろう』とやしろの奥に、その男が着ていたころもをビリッと。『アカチャ』というねずみの妖怪に頼んで、祝の力で作られた袋に入れて。ん、今もあるのかな。」


首をかしげてパチクリ。


「アカチャ、鼠。」


沼垂神ぬたりのかみ?」


「ハッ! 山背やましろの社憑き、鼠ん。」






山背の外れで暮らしていた姫鼠妖怪アカチャと、赤鼠妖怪クロチャが取っ組み合いの喧嘩けんかを始めて十年後、強制融合されて誕生したのが鼠ん。



夜久も姫鼠の妖怪、収集品披露会で知り合った可能性が高い。


ずっと『アカチャ』と呼んでいた鼠が『鼠ん』と名を変えても、変わらず『アカチャ』と呼んでしまうだろう。


呼んでもオカシクない。






「寿、アラとは今も。」


「はい。休みの日にひょうの泉で水をみ、花を摘んでたいらへ。留萌社るめのやしろが埋まっている所にそなえ、祈りを捧げます。アラとミヲも、いつもフラリと現れて祈りを。」


「そうか。」


「はい。」






留萌社に祈りを捧げたら坦社が埋まっている所へ行き、同じように祈りを捧げる。


小さな山ひとつホド離れているが二社とも、あの山津波やまつなみまれてしまった。滑社なめらのやしろも呑まれ、埋まってしまったが大崖に一社。



留萌社と坦社は共に呑まれ、坦の地に埋まっている。三柱とも御隠れ遊ばした。けれど今でも生き残りが、穏やかな表情で黙祷を捧げる。



多くの命が奪われた。生きたくても生きられず、守りたくても守れずに苦しみながら。


迷わず根の国へ行けるよう、闇堕ち覚悟で御力をふるわれた神。神を支えた使わしめ、社憑き。



生き残った事を責めるのではなく『生かされた』と、生き残ったのは『御霊を祭るため』だと、そう思って生きている。


うつむかず前を向いて、泣かずに笑って、胸を張って生きている。






「朝になったら話を聞こう。」


「山背の継ぐ子が祝辺はふりべに引き取られ、人の守からおにの守になったと聞く。」


「生き物の考えを読む力を持つスミ、でしたか。」






祝辺の守に頼るのは、まぁ何だがな。祝社はふりのやしろには山越や山守、霧山で生まれた守も居る。イザとなれば話を通してもらおう。



今のトコロはっきり言えぬが、セイはの血を引いている。


山守に引き渡された詐の娘が育ち、子を産んだ。その子が山守から山越、山越から嚴山いずやま、嚴山から流離なば、流離から汊眺さながへ移り住み、流連滝いつづけだきを下ったか。


いや滝ではナク崖を下り、狩山かやまへ。



狩山には多くの里や村があり、助け合って生きている。他所よそから引っ越してきた者に声を掛け、いろいろ教え導くだろう。


そうして子を生し時が流れて、山在やまきでセイが生まれた?






「もしかすると。いや、そんな事は。」


「沼垂神、どう為さいました。」


砂水神さみずのかみ。私、フと思ったのです。『山守のテイに奪われたセイ、明日あびも詐の血を引いているのでは』と。」


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