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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
暗風編
1118/1589

12-36 珍しいモノなら何でも


山背やましろの社憑き、ねずみん。蒐集癖しゅうしゅうへきが強い鼠妖怪である。



今から見れば昔のこと。山背の外れに鼠が二妖、それはもう仲良く暮らしていた。


一妖は姫鼠のおにが融合して生まれた妖怪、アカチャ。もう一妖は赤鼠の隠が融合して生まれた妖怪、クロチャ。



鼠の喧嘩けんかならチュウチュウで済むのだろうが、それが妖怪だとイロイロ違ってくる。


ヂュウヂュウ雄叫おたけびを上げ、朝から晩までドッタン。いや土煙つちけむりを上げながらドスン、ドカン。


狸の交尾より激しく、騒がしい。



取っ組み合いの喧嘩を始めて十年後、山背神やましろのかみの堪忍袋の緒が切れる。


『そんなに離れたくナイなら一つになれ』と御叱りを受け、ポッカァン。前足を組んだ状態からビタンと密着。


踏ん張りながらあらがうもドウにもならず、強制的に融合。



幾ら意見を述べても暖簾のれんに腕押し、ぬかくぎ。少しも手ごたえが無い。



国つ神の一喝いっかつにあい、人の姿に化けたよりにより四肢ししを縛られた。おうごを通され、吊るされた状態で山中さんちゅう引き回し。


その後『鼠ん』として山背社やましろのやしろに就職し、社憑きとなった。






「これっ、鼠ん。」


蒐にしかられ、シュン。


「珍しいのに。」


ボソッ。


「珍しいモノを集めたい。その気持ちは良く、良ぉくわかります。でも今じゃない。」


収集癖が強いダケに、通じ合うモノがある。のか?


「はい。今はこらえます。」


『今は』って言ったよ。集める気マンマンだよ。






アカチャもクロチャも整頓下手せいとんべただったが、融合することで整理するナンテもってのほかな残念妖怪に変身。


歴代祝に泣きついて『格納綴じ』を作成依頼。地中の巣穴に種別、年代順に納められている。



何でも集めちゃう、それが鼠ん。同時に見つけた鳥の羽は蒐にゆずるが、先に見つければウキウキ拾って持ち帰る。それが鼠ん。


赤鼠の強い後肢に姫鼠の身軽さが加わり、飛び上がっても、木に登ってフライングキャッチ。狙った獲物はのがさない。それが鼠ん。






「山背の祝には確か、全てのモノを捕らえる力が有りましたよね。」


「はい。」


このままじゃ狩られる、じゃなくて飾られると思った明寄あよ。ポンと大きくなって蒐に問う。






山背の祝は有形・無形の全てを隔離してじ、格納する力を生まれ持つ。


時間停止機能付きなので、次代に引き継げば永久保存可。対象が視界に入っていれば無接触で取り込めるので、身柄の拘束や捕縛に有効。



山背社の壁面を飾る鳥の羽コレクションも、全て祝の力でコーティング済。


神議かむはかり@出雲でもアチコチ回り、祝の力が込められた特製袋に入れて持ち帰る。勿論もちろん、お土産みやげも忘れません。


銘菓『神在団子』、祝にも大好評。






すいさまから山背の社憑きは、何でも集める。そううかがいまして。」


明寄がニコリ。


「はい、珍しいモノなら何でも集めます。」


鼠ん、キラリ。


「その中に『闇』も、含まれますか?」


「ハイッ。もしよろしければ私の巣穴に、お連れします。」


自慢のコレクションを見せたくて見せたくてウズウズ。イロイロあるよ、闇もネ。ウフフ。


「もし私が探し求めている闇が、その中に有ったら。」


有ったら?


「お譲り、いただけますか。」


明寄の目がキラリと光った。




『いただけますか』と問うたが、コレ命令よ。目当てのしなだった場合、黙って差し出せ。そう言っている。


差押令状が必要ならやしろを通して即、発行。どうだ!


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