12-32 跳びます
ふぅ、今日も痛かったゼ。ってかさ、近くに居るって気付いてるよね。なのにナンデ出て来ないんだ。
泣くぞ、ワンワン泣くぞ。大泣きしちゃうゾ。
「トウッ。」
木の上から闇を伸ばし、猪を串刺しにした。そのまま持ち上げ、ズズズと手元へ。
「いっただきまぁす。」
頭蓋がパカンと開き、丸呑みゴックン。
「うん、美味い。」
イノシシはカノシシと言われる鹿と共に、古代から日本人が食用とした獣。豚の原種と考えられています。肉は山鯨と言われ、牡丹鍋にすると美味。
何だカンだと理由を付けて、宴会したがる傾向が強い日本人が、太古からパックンしていた食材。不味いワケが無い。
こう言っちゃ何ですが、グルメだからね。世界各国の料理を上手い具合に取り入れ、日本人の舌を満足させる逸品に変える。
和風に再構成されたソレは高い完成度を誇り、本家本元もビックリな極上品に昇華。その情熱、錬金術に傾けたら今頃は・・・・・・。
花より団子の日本人、色気より食い気だもの。早早に見切りをつけ、食を追及したでしょう。アハハ。
「わぁい、熊っ。」
ブサッと打っ刺し、大熊を仕留めた。
重かったのか大枝がグワンと撓る。がソコは分ティ。ヘビー級選手、じゃなくて肉塊を気合と根性でエイッと持ち上げた。
「いただきまぁす。」
頭蓋パッカァン、かぁらぁのぉゴックン。
「うぅん、頬が落ちそう。」
熊肉は身体を温める効果や滋養効果が高いとされ、美肌効果があるといわれるコラーゲンも含まれる。
よって美容に効果があると珍重され、熊鍋にすると動物性蛋白質と食物繊維やビタミンなどが同時に摂取できるトカ。
夏のクマは痩せて脂肪が乏しいうえに、野生特有の匂いが強く、不味いとされる。
けれどソレは美味しい物を食べ慣れていて、味の良し悪しを識別する力がついている日本人だから、ソウ思うダケ。
肉は肉だよ。
熊肉は野生肉なので臭みが強いと思われがちだが、原因は季節によって主に食べる餌が違う事と、狩猟後の処理の仕方で個体差がでる。
熊を狩猟した後、すぐに締めて解体するなど、一定の技術が有れば問題ない。らしい。
「お肌ぷりっぷり。傷も痣も消えてる。やったぁ。」
熊肉効果、絶大。
狩り? の最中、鼠に齧られたトコロもキレイに元通り。
「ヨォシ、張り切って跳ぶぞ。」
トコトコと定位置に移動し、準備運動を始めた。一にぃ三、二ぃにっ三と飛んだり跳ねたり伸びたりイロイロ。
家に引き籠もっている明日が外に出るのは朝、顔を洗う時だけ。好機 逸す可からず!
「今だ、エイッ。」
両手を伸ばしたまま体側に付け、膝を曲げてピョォンと横に高く跳ぶ。勿論、笑顔だヨ。
「イデッ。何のナンの、トリャッ。」
再び両手を伸ばしたまま体側にピタリと付け、膝を曲げてピョォンと横に高く跳ぶ。笑顔でネ。
「イッテェ。負けるモンか、トウッ。」
気合と根性で立ち上がり、両手を伸ばして体側にピタッ。膝を曲げてピョォンと、横に高く跳んでドスン。
「フゥ、笑うの忘れてた。気を取り直してぇって、フフ。ふふフン。今日はコレで許してやるか。」
用事を済ませた明日、帰宅。明くる日の朝まで出てきません。
「新しい朝が来た! 諦めたらソコで終わりだ。張り切って立ち向かおう。エイッ。」
両手を体側に付け膝を曲げ、横に高く跳ぶ。笑顔で♪