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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
暗風編
1111/1592

12-29 全てが偽りだとは思わん


人は信じたいモノを信じ、聞きたい事しか聞かない。ういう生き物である。




「あらっ、エッ。」


「何が『エッ』なんだ、明日あび。」


山在やまきやしろの司、カヌ登場。


「そのバンと出た、ような気がして。」


はい、きよの背に乗ってバン! と出てきました。


「社憑きから全て聞いた。もう忘れたのかい? 言ったよね。シッカリと伝えたよね。」


一瞬、眉をひそめたカヌ。明日の乱れた衣をサッと直し、冷静に対応。


「えっと、何を。」


カヌじゃなくても脱力します。


「畑人サトのせがれ、セイは多くの人を殺した。闇に体を奪われ、人で無くなった。」


『あぁ、その話』という顔でツン。


「山在には」


「私が居るわ。口寄せで、死口しにくちで判ったの。ミチの父だった狩り人は、ヒロは殺されたんじゃないって。」


「謝りなさい。」


「え?」


「謝りなさい、明日。ヒロはミチの父だ。今も昔も、これからもミチの父はヒロだけだ。」


「でもカヌが引き取って」


「私はミチの後見うしろみ、父では無い。幾度いくたびも言わせるな。ミチの父はヒロ! 私は宝を預かり、育てているダケ。」


純の後ろで涙ぐむヒロに、ピュイが黙ってグリグリする。他のおにたち、もらい泣き。


「ドッチでも良いわ。」


良く無い!


「狩り人ヒロはセイを助けて死んだの。セイに殺されたんじゃない。」


いいえ。ヒロの死因は溺死ですが、そのヒロを濁流に落したのはセイです。






水嵩みずかさを増した川に落ちそうなセイを見つけたヒロは、万が一の事も考えて行動しました。


もし滑っても助けられるよう、生きて戻れるようシッカリと縄の一方を太い幹に、もう一方をおのの腰に結んでからセイを引き上げます。


きわから離れ、泣きじゃくるヒロを落ち着かせてから木にくくり付けた縄を解いた、その時です! セイが勢いを付けて跳び、ガンとヒロをりつけたのは。



泥濘ぬかるんだ斜面から頭が下方へ向いた状態でズルズル滑り落ち、アッと言う間に背中からドボン。


望月湖もちづきのみずうみに流されたむくろは魚に食われ、骨は湖底で泥に埋もれたまま。腰に結わえた縄には藻がつき、ユラユラ揺れています。


ココに居るよ、と知らせるように。






「・・・・・・ハァ。明日の口寄せ、全てが偽りだとは思わん。がな、死口は偽りだろう。」


「なにを」


「聞け、明日! 社憑きになったのは殺され、思いを残して死んだ隠が集まって生まれた妖怪だ。いつ、どこで、誰に、どう殺されたのか全て、全て聞いた。この耳でハッキリと聞いた。」


嘘でしょう? 信じない。私は信じない。


「セイは殺し過ぎた。その身に闇を宿し、それがわざわいもたらす闇に食われて、人で無くなったのだ。見た目は同じでも、もうセイはセイじゃない。」


「うそ、嘘よウソ嘘。」


「嘘じゃない。もし目の前に現れても、決して近づくな。セイの体を奪った闇はな、明日の体を狙っている。」


カヌに強く掴まれた肩が、前後に大きく揺れた。


「その闇は口から飛び出し、口から入って頭に突っ込む。捨てられた体は骸となり、息を吹き返す事は無い。」


腰が抜けたのか、明日が膝から崩れ落ちた。






「ナニ言ってんのかサッパリ分からんが、あの男。フフッ。持ってるな、持ってるな祝の力。ってコトは祝女はふりめだ。あの女は祝だ祝だ、ワッハッハ。」


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