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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
暗風編
1109/1589

12-27 異議有り


信じられない。いいえ、信じたくない。


確かにセイは何と言うか、思うまま生きているわ。でもソレだけ。あの子が人を、助けに来てくれた人を殺すなんて。



・・・・・・思えば、そうね。セイの妹や弟が生まれる度、死んでいる。引き摺るように連れて入った森で、その姿を消している。


姉さんは山在やまきに居るケド兄さんは出た。その兄さん、生きているのかしら。




「でも、だからってセイが殺したと。」


『言い切れない』と言えないのはナゼ。


「心のドコかで私、疑っている?」




信じたい。信じたいのよ、私はセイを信じたい。


だってセイだけよ。口寄せしか出来ない私に、いつもニコニコしてくれるのは。あの子だけよ、丸ごと信じてくれるのは。あの子だけなの、私を認めてくれるのはセイだけ。



口寄せしたらね、みんな涙を流すの。『良かった』とか『信じていた』とか言って。でも少しすると『ありがとう』って、寂しそうに笑う。




「はぁ。顔を洗って、それから。」


あら? そうよ、どうして気付かなかったのかしら。セイを助けて戻らなかった人で、口寄せを頼まれてナイ人が居る。


「狩り人のヒロ!」


えっ、オレ?


「社の司に引き取られたから、きっと頼みづらいのね。」


いや、そんな事はない。って、えっと・・・・・・始めちまったよ。




タッと家を飛び出し、口寄せの儀式を始めた明日あび


村外れ、ポッツン度が高いとはいえイカンよ。もっと、こう恥じらいトカ? ちゃんとしようよ、考えよう。



寝起きなので衣も髪も乱れている。なのに整えず手拍子、足拍子。ずんチャッどんチャッ、ぶんチャッチャ。ドドドんチャッチャ、ぶんチャチャずんチャ。


次第に複雑になる拍子、乱れる足元。目を血走らせ、息を弾ませ踊りうなり、そして。




「キエェェェッ。」


茹蛸ゆでだこのように真っ赤になって、浮かび上がった血管がプチンと切れそうな叫びを披露。



あぁ、そうか。村外れでの一人暮らし、獣害に悩まされているのでは。なんて思っていたケド心配ないネ。


その叫びを聞けば、どんな獣も尻尾を巻いて逃げるわ。



「ウゥゥ・・・・・・。」


社憑きになったきよが姿を隠したまま、体と耳をペタンと伏せてうめいています。キツイよね、鹿だモン。


「気を確かに持て。」


「傷は浅いぞ。」


人の隠たちが口口くちぐちに、鹿のおにを励ます。ちなみに外傷は無い。


「ピュイ。」 ナンダヨォォ。


思わず威嚇した鹿クン、涙目。恨めしそうに明日を睨み、ポッカァン。




胸やら腿やら露出したままバタンと倒れ、イイ感じに隠れていました。なのに衣を直さないままスクッと立ち上がり、目の遣り場に困る姿で胸を張る。


うん、牡鹿おじかじゃナクても固まりマス。人の隠たちも『あちゃぁ』な感じで頭を振ったり、顳顬こめかみを押さえてるヨ。




「ねぇさっきの、つがいを求める叫びだったの?」


違います。


「人のめすって、鹿より凄い声だすんだね。」


ソレはドウなんだろう。個人差がって、イヤイヤ。


秋に『ケーン』って、牝鹿めじかを呼ぶ牡鹿の声。詩歌に多く詠まれてるケド情熱的よ。




「皆、聞いてくれ。オレはセイに殺されたんじゃない。助けようとして川に落ち、流されて死んだんだ。」


「オイッ!」


異議有り。


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