12-24 用意どん
ほえ? ココはドコ、私は分ティ。そうだ、この体を乗っ取って人里へ行こうとしたら倒れた。ん、何か痛い。
倒れている間に、鼠にでも齧られたか。
「ヒョッ、ヒョエェッ。」
い、イノシシに囲まれている。生きたイノシシの群れにカカッ、カコマレタ。
「どうしよう。」
人の子じゃ走ってもって、親はドウした親は。迎えに来いよ、探しに来いよ。
「・・・・・・食べても、美味しくナイよ。」
いやいや、まん丸プニプニ幼児体型。中身は残念だけど、野山を駆け回るのが好きな健康優良児。
「フゴッ。」
ドコからドウ見ても美味しそう。
犲は人を襲いません。死肉は食らいますが、それは食べ物が少ない冬季のみ。
人は雑食性なので食べても美味しくアリマセンが、同じ雑食性でも猪肉は食用肉。山鯨、牡丹などと呼ばれマス。つまり美味しい。
「くっ食う気か。」
焦った分ティ人、ゾワッと闇を展開。
「フゴッ、フゴフゴ。」 コリャマズイ、ヤラレルマエニニゲルゾ。
後退る猪軍団、十分に距離を取ってから一目散に逃げる。
「ふぅ。」
ホッと一息。
どう考えてもオカシイ。人の子が山に取り残されたのだ、親が慌てて探しに来るだろう。
それに『セイを置いて戻ろう』と言った、あの子。セイの親に伝えなかったのか? 他の子も。いや、伝えたとしても動かん。
セイよ、目を付けられているぞ。この感じは狩頭、いや長だろう。親は親で、あぁ諦めたのか。目が虚ろだ。
人が消えたり死ぬ度、頭を下げて回っている。となりゃ、そりゃ草臥れるわな。
「ん? 一人だけ違うのが居る。」
女、それも社の。
「祝か! 祝が居るんだな。」
ワクワク。
「オッ、村外れで暮らしているのか。」
それも一人で。
「クックック。」
小さくでも男だな。年下ではなく年上に狙いを定め、甘えた目を向け近づくとは考えたな。子にか使えんし、周りに怪しまれる事も無い。
「朝、顔を洗いに出たトコロを狙おう。」
女が暮らしている家は村外れ、それも川の近くに建っている。ケシカラン何かの中に在るが、アチラから出てくれば奪えるだろう。
他に家は無いが畑があり、いろいろ育てているようだ。となるとセイと同じ、嫌われ者。
いや違う。他とは大きく違っているから恐れられ、うぅん。というより疑われている、怪しまれているのか。
何らかの力を生まれ持ったが、ソレを使い熟せてイナイ。真なのかと疑われながら求められ、力を揮い続けている。といったトコロだろう。
「まぁ良い。奪えばハッキリする。」
また獣に襲われちゃカナワン。とりあえず近くまで行き、木の上で休むか。
「うぅっ。」
ブルル。
夏とはいえ夜は冷える。太い枝まで登れば暖かく、はナラナイが少しは過ごし易いハズ。
「走るか。」
トコトコ歩くよりポカポカするだろう。転ばないように気を付けながら、用意どん!