12-23 就職決定
山在の悪たれ、セイの体に乗り換えた分ティ。乗り捨てた鹿を捨て置き、山在を目指したので気付かなかった。
その骸に隠が、セイに殺され山在に戻った魂が飛び込み、妖怪化した事に。
気絶しているセイを起こしたら乗っ取られると諭し、放置して山在に戻るよう説得。その全てを目撃した山在神の使わしめ、彗は固く信じて疑わない。
この妖怪なら、きっと山在を守り抜くと。
斯くして、鹿と人の魂が融合して生まれた妖怪は胸を張り? 威風凛然と歩を進める。
「ホウ。」
彗が目を付けた妖怪だ、澄んだ心を持っているのだろう。とは思ったが、ここまで清らだとは。
「其方に名を授けよう。」
エッ!
「混じり気の無い、幼児のような清らさ。純。」
よよ、宜しいのですか?
「そうアワアワせずとも。」
そりゃアワアワしますよ、えぇえぇ。
純と命名されたのは、人と鹿の魂が融合して生まれた妖怪。
山守の呪い祝、テイから切り離され望月湖に流れ着いた闇の集合体、分ティに体を奪われた時から悲劇が始まった。
気になる雌との初デート?中に分ティ魚に体を奪われ、求婚前に鹿生を強制終了させられた牡鹿。山在の悪たれ、セイに乗り換えるために乗り捨てられ強制終了。
短い鹿生だった。
骸に周辺の隠が飛び込み妖怪化。その隠たち全て、セイに殺され山在に戻った魂。
死んでるケド血も肉も有る、一途で純情な鹿も思った。『死んでも死に切れないよね』と。だから力を合わせ、ムクッと立ち上がる。
気絶しているセイを起こしたら乗っ取られると諭し、放置して山在に戻るよう説得。
「どうだろう。」
現在、山在神より『社憑きにならないか』と口説かれ中。えぇぇ、イロイロえぇぇ。
「わわ、私に務まりますでしょうか。」
アワアワ、アワワ。
妖怪になったのだ。気になる牝鹿に求婚どころか、思いを伝える事すら出来ない。
湖で並んで喉を潤す前に告白し、思いの丈を打ち明ければ良かった。そうすれば幸せなまま、って待て待て。当たって砕ける、いや振られるとは限らんか。
まぁ何れにせよ残されたカワイ子ちゃん、深く傷つくだろうな。
『ちょっとイイかも』と思った男の子と湖畔に出掛け、並んで喉を潤した。
この後ドコへ行くのかしら。二つの川が一つになって力強く飛び出す、流連滝を見つめながら『私たちも・・・・・・』キャッ。
てな具合にドキドキしていたら事件発生。
意中の彼? が急に苦しみ出し、バタンと倒れてビックリ仰天。スッと立ち上がったらナント、別鹿になっていた。
罪づくりな闇だよ、分ティ。
幾ら鹿が一夫多妻でも、初カレ候補が目の前で急死すればさ。心理的に大きな打撃を受け、その影響がいつまでも残るよ。
恋愛や結婚に臆病になっちゃうよ。
「彗と力を合わせ、私を支えてくれないか。」
ニコッ。
「はい。」
こんなに強く求められているのに、断るなんて出来ない。それに社憑きになれば、守りたかった全てを守り続ける事が出来る。
「宜しくお願いします。」
キリッ。
人と鹿の妖怪、純。めでたく山在社に就職決定。社憑きとして力を揮い、山在の安全と幸福を守ります!