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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
暗風編
1103/1596

12-21 反社会性人格障害


えっと、どうしよう。


あたりに行こうか。いやソレより茂みに隠れてってココ、森の中。やぶだ藪、藪を探せ。人里から離れているんだろう、ボウボウだ。


ってコトは見つけたぁ! エイッ。






「逃がすモンか。」


短い足でタッタと走りながら、三の矢をつがえてはなつ。結果、藪の中にポトッ。


「ケッ、下手へたっぴ。」


ティ鹿。思い切って藪から出て『あっ、シマッタ』な芝居を打ち、狩らせる事にする。


「待て待て待てぇ。」


ピョン。


「えっ、エイッ。」


トンッと当たり、ポトリと落ちたがソレはソレ。華麗な滑りを披露し、『ヤラレタァ』と演技。


あまりの下手さにズッけたのでは無い。


「ヤッタあっ、ヴォ、ヴォエッ。ヴッ。」




『ヤッタァ』と喜んで口を開けたので、素早く鹿の体から脱出。気合と根性でセイの口中に突撃。気道から鼻腔、副鼻腔へ進み頭部に侵入。


のどを引っ搔きながら苦しみ、バタンと倒れた時に後頭部を打ち付けグワンと揺れた。それでもくじけず諦めず猛進し、すみやかに脳を制圧。


人の体ゲット♪






「やった、奪えた。」


格闘中、ねずみかじられた事に気付かず大喜び。


「イイね、この体。闇を纏っている。」



香り高くコクがある。こんなにまろやかな口当たりの闇、稀にしか味わえない。はぁぁ美味おいしい。


ん、何だい騒がしい。どんなに暴れても叫んでも何も変わらない。この体、分ティがいただいた。『返せ』だって? ナニ言ってんだい。



「ホゥ、殺してんねぇ。」


ナッ、オレは誰も殺してない。


「弟に妹、母。助けてくれた狩り人を飛ばして、にごり水の流れにませたね。殺したね。」


そっれは、ヤツが弱かったから死んだんだ。狩り人なんだ、泳ぎ切れなきゃマズイだろう。


「ハッ。おやおや狩り人に釣り人、きこりうらみでも有るのかい。」


弱いから死んだんだ! オレは悪くない。何にも悪くない。死んだヤツが弱いんだ、強けりゃ生き残れた。それだけの事だ。


そうさ、オレは悪くない。悪くない。



「ホウ、なら諦めろ。」


エッ、何を。


「聞こえるかい。死んだ、いや殺した人の声が。」




『もう直ぐ子が生まれるんだ。だから死ねない、死にたくない。』


『どうして。』


『母を亡くしオレまで死んだらミチは、たった五つの子が親無しになる。』


『痛いよぉ、痛いよぉ。』


『オレが何をした。殺したいと思うような事、したか。殺したいと思われるような事、したか。』


『誰か助けてぇ、助けてぇ。』


『こんな所で死んでたまるか! 生きて、生きて戻る。戻らなきゃイケナイ。足が悪い父さん、体が弱い母さん。おさない妹や弟を残して死ねない。』



・・・・・・許さない! 許さないぞ、セイ。



谷底へ落ち、死んだ人。頭を割られ、死んだ人。濁流に呑まれ死んだ人。くいを打たれて死んだ人。生きたまま獣に食われ、死んだ人。


獣の群れに蹴り入れられ、助けを求めながら死んだ人。崖下に落され、苦しみながら死んだ人、人、人、人、人。




「アッアッ、アァァァァァ。」


血走った目に囲まれ、責められ、足を掴まれ絶叫。


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