5-37 離さないで
隠の世から、雲井社まで。最短距離で戻る。コウの宝の力を使えば、それが可能だ。邪魔する妖怪はいない。ゴロゴロとコンが、睨みを利かしている。
今回の騒動に加担した、愚かな妖怪たち。残らず粛清された。数は少なかった。とはいえ、いた。
魂を引っ剥がし、浄化。見せしめのために、厳重に罰する。
「情け? 赦し? ナニソレ、知らなぁぁぁい。」
三妖怪。可愛く、言い切った。死屍累累とは、この事。それが皆、妖怪なのだから、ビビるのは当然である。
「あの、ゴロゴロさん。何だか、妖怪たちの目が、怯えているような気が、するのですが。」
「そうか? 気のせいだろう。なぁ、コン。」
「そうそう。人が、妖怪。しかも、使わしめを従えて歩くのが、物珍しいのだ。気に病むな、楽しめ。」
楽しめって、楽しめません。オレ、人の子ですから。ん? 使わしめって、神の使い、だよな。そんな凄い人、じゃなくて妖怪を・・・・・・従えて???
「申し訳ありません。ゴロゴロさん、コンさん。その、オレ。お二人の後ろを歩きます。だから」
「ならぬ。」
「そうだ。ならぬ。」
「・・・・・・。」
爺様、ミツ。オレ、どうすれば良いんだろう。
光の先に、見えた。雲井社だ。
「ツウ!・・・・・・?」
「眠っているだけ。おかえりなさい、コウ。」
「祝。ただいま戻りました。」
「戻ったぞ、フク。」
「ツル、どうした。」
「あ、あの、それは・・・・・・。」
熊。もちろん、下ごしらえ済み。雲井社へ戻る道で、バッタリ遭遇。先頭を歩いていたコウが、反射的に仕留めた。
「血も腸も、抜いてあります。皆さんで、どうぞ。」
「それはそれは、どうも?」
こ、コウが仕留めたのか? さすが、ジロの孫。
「・・・・・・コウ!」
ツウが飛び起きた。
「おはよう、ツウ。」
「・・・・・・コウ? コウ!」
「ただいま、ツウ。」
「おかえり、コウ。」
バッと抱き合う。
「コウ、離さないで。私を、ずっと。」
「離さないよ、ツウ。」
まさに、二人の世界。
コウが戻ったことは、子の家にも伝わった。すぐに雲井社へ行こうとしたが、止められた。
「あしたでも、いいじゃないか。今は、そっとしておこうぜ。」
ノブ、大人である。
「そ、うだな。うん、そうしよう。な、みんな。」
ダイ、流れを読んだ。さすが、釣り人。