表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
暗風編
1099/1588

12-17 取り決め


流連川いつづけがわ下高川しもたけがわを越える南路みなみぢを避け、急川きっかわ冷泉川ひやみずがわを越える北路きたぢを選択。急川越えも難しかったが、冷泉川はアブナカッタ。




「ジヌガドオモッダ。」


ゼイゼイとつらそうに、肩で息をするティ鹿。ハァァっと長く息を吐き、スゥっと吸う。


「ヨシ、行こう。」






山在神やまきのかみの使わしめ、すいに見つかれば終わりだ。一蹴りで下高川まで飛ばされ、ボチャンと落ちて望月湖もちづきのみずうみへ。


で、また遣り直し。



分ティ狸ィは魅惑の我儘ボディだったので、湖に流れ着いて直ぐ緊急脱出できた。けれど分ティ鹿は驚くホド細く、のっ引きナラヌ破目はめおちいる。



める時も健やかなる時も・・・・・・なんて、とてもじゃナイけど誓えまセン。『体目当(からだめあてだったのね!』って、何を今さら。


それが何か?






「戻ろうよ。」


人の子みっけ。わぁ、いっぱい居る。ルンルン。


「ねぇったら。」


「うるせぇ! 戻りたきゃ一人で戻れや。」


目の前に飛び出るのはねずみばかり。大物を仕留めて大人おとなに認めさせたいセイを苛立いらだたせていた。


「ウッ、もう知らない。セイを置いて戻ろう。」


バッと振り返り、他の子に声を掛けた。






狩頭かしがしらの末息子は泣かずに生まれ、逆さ吊りで尻をペンペンされる。


ゲポッとして控え目に『ほぎゃぁ』と泣いたが産婆さんばから『育たないカモしれない』と言われ、『強い子に』との願いを込めて『ツヨ』と命名。



体が小さく気も弱いが、カンの鋭さは親譲り。


分てぃ鹿の気配を即座に感知。危険を察知し、他の子を連れて村に戻る事を選択する。






「うん、そうだね。」


「みんな戻るよ。置いてっちゃうよ。」



セイが怖くて逆らえず、嫌イヤ連れてこられた子らが言う。控え目に『戻った方が良いよ』と伝えるも、その思いは全く伝わらない。



「行こう。」


ツヨに言われ、コクンと頷き歩き出す。




アレは危ないヤツだ。あの動き、セイに狙いを定めたな。悪く思うなよ。『戻ろう』とハッキリ伝えたのに残ったんだ、もう知らない。


急いでココを離れ、遠回りして戻ろう。オレが気付かないダケで、他にも潜んでいたら村にわざわいもたらす事になる。




「コッチ。」


振り返らず、右の手でももを小さくパンと叩いた。子らは黙ってツヨに従い、転ばないよう気を付けながらスタスタ歩く。


振り返らないのは『危ない』。歩きながら手で腿を一つ叩くのは『遠回り』。右を叩けば右回り、左を叩けば左回りして戻る。






子だけで森に入るのはイケナイ事だが、セイに逆らえば何をされるか分からない。だからツヨは小さい子にも判るよう考え、『取り決め』としてシッカリ教えた。


他にも沢を越える時は手を繋ぎ、足を滑らせても流されないようにピョンと飛ぶ。ツルッとしても慌てず騒がず、繋いだ手を強く握る。


沢でも幼子が足を滑らせれば、そのままズルズル流されてしまう事。谷に落ちれば命は無い事も伝えた。






「ただいま。村長むらおさ、少し良いですか。」


子を代表して、ツヨが声を掛ける。


「わかった、聞こう。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ