12-15 次こそ
山在神の使わしめ、彗に見つかり踏まれました。
ググッと強く踏まれ、狸鳴きしてキュルン。助けて、お願い。まだ何もしてナイよ。グッ、グルジイ。
「降ってきたか。」
ザァっと雨が降り風が吹き、顔の真下に水溜が出来た。
頭を上げても海老反りになるダケ。鼻で息は出来るケド、踏ん付けられたままじゃ苦しい。
「ヴューン。」
狸鳴きするのも辛い。あぁ、目が眩む。
「グヘッ。」
背中を踏み潰され、グタッとなる。短い狸生だった。
ん、何だ。
「わぁぁっ、助けてぇぇ。」
子だ、子の声がする。
「クッ。」
狸から闇が出るまで待っていたら、きっと手遅れになる。子を救わねば!
ボンと巨大化した彗が分ティ狸ィを後ろ足で、思いっきり谷底に蹴り飛ばす。
増水した下高川にボチャンと落ちた瀕死の狸は、そのまま濁流に呑まれ望月湖へ。
「ジヌガドオモッダ。」
狸の心臓が止まる前に緊急脱出した分テイ、水中で揺らぐ。
「何が何でも奪ってやる。」
雨が上がって二つ朝を迎えたら、きっと獣が喉を潤しに来る。舌を伸ばしてピチョピチョしだしたら上がり、そのまま吸い込まれれば良い。
「次こそ奪う。」
獣の体を手に入れて、冷水川沿いに狩山へ。狩山社を右にして、ズンズン進めば山在に着く。
「ん、フッ。」
闇との適合率が高い大魚が、フヨフヨ揺らぐ分ティ目掛けて急接近。カパッと開いた口に飛び込み、速度を落さず頭部に侵入。
速やかに脳を制圧。
「この大きさなら、田龜に怯えずに済む。」
ドドドと流れ込んできた濁り水から、土が離れて底に沈んだ。滑り崖に獣が近づいても良さそうなのに、コワイくらいに静か。
「・・・・・・思ったより、遅いなぁ。」
魚の体を奪ったが、雷に頼るのはドウかと思う。また上手く運ぶとは思えないし、四つ足を。
「でもなぁ。」
四つ足だと弾かれて、中がドウなっているのか分からない。鳥なら飛んで上から見られる。
「フゥ、次は狐を狙うか。」
狸はドキドキする度、倒れるからな。
源の泉に飛び込み、冷泉川を下って望月湖へ。小さくなって蝌蚪や蛙、小魚を捕まえて美味しくイタダク。
「戻ったのか。」
狸を乗っ取り、山郷に仕掛けようとしたテイの闇。山在の彗が仕留め損ねたと聞いたが、こんな所で会うとは。
「・・・・・・ギョッ。」
あの目、気付かれたか。いやいや。スゥイ、スイスイ。ススイがスイ。
嘘ぉん、気付かれた?
ドコからドウみても魚じゃん。湖で生きる魚じゃん。落ち着くんだ、分ティ。ゆぅらユラと鰭を動かし、ココから離れよう。
フゥ、ココまで・・・・・・あれ、あれれ? どうして付いてくるの。闇はシッカリ引っ込めて、キッチリ隠しているのにオカシイ。
アハッ、使わしめだからカナ。そうなのカナ。
にに、逃っげろぉ。
四つ足よ、サッサと水を飲みに来い。分ティさまが憑いてやる。だから早く、早くぅ。
祝 ~hafuri~ 連載三周年。
これからも応援、よろしくお願いします。