12-14 狸だけど
このままではイケナイ、他を探そう。狩山社だっけ? 石積みの社まで戻ろう。
田龜はコワイけど今は狸。襲われる前に逃げられる、いやプチッと出来る。としても近づかないゾ。
「アチコチ探したいのに、戻るしかナイなんて。」
他にも人里がある。そう思ってさ、山の奥へ行こうとしたんだ。そしたらビリッとズサッとバチッと、いろんなモンに当たるんだ。
「思うようにナラナイな。」
崖まで出たら風に引っ張られ、落っこちそうになる。
「風下に歩き出したら、犲に囲まれるし。」
隠だったから良かったケド、死ぬかと思った。
「でトコトコ、あの泉のトコまで戻ってる。」
鼠とか兎とか飽きたから、木に登って木の実を食べてみた。で猿に囲まれ『キィィ』って何だ。
ドクンとしたから慌てて逃げたケド、逃げたケドさ。
サッサとイイの見つけて、体を奪わなきゃ。
狸より人が良い。若いのが良い、子は狙わない。見つけたら追うけど人里に着いたら、もっと良いのが居る。
「ヒッ。」
い、居るよ。社の奥からビンビン伝わる、この感じ。
「あっ、誰か来た。」
隠れなきゃ。
プリンプリンからプリプリになった分ティ狸ィ。犬に襲われないよう素早く木に登り、様子を窺う。
狩山社から少し離れているが、獣なので良く聞こえる。
「狩山さま。どうぞ、お召し上がりください。」
石積みの社に団子を供え、手を合わせて一礼。
「一雨、来そうですね。」
スッと目を細め、空を見上げた。
「下高川が溢れなきゃ良いが。」
霧の湖から望月湖へ流れ込むのが下高川。霧の湖から深水に流れ込むのが上高川。
霧の湖は穴の底にあるし、大雨が振っても溢れる前に川から流れ出る。
狩山に冰山、白泉や双見、山守も高いので溢れても流される事は無いが、泥濘む前に近くの山に逃げないと危ない。
アッと言う間に大水に呑まれ、谷底へ落ちるから。
「では、また参ります。」
ユックリと立ち上がり、南へ。
アッチに山郷と違う里がある。祝の力を持つ人だって、いっぱい・・・・・・居ると良いな。
オッとコウしちゃイラレナイ、下りよう。
スルスル、トタッ。プリプリプリプリ、お尻プリプリ。鼻をヒクヒクさせながら大急ぎで追っかけ、見つけたらトコトコ歩く。
見失わないよう、気を付けながら。
「アタッ。」
上からグッと押さえつけられた分ティ狸ィ。
「ヒョッ。」
グリンと頭を動かし、見上げて固まる。
「お、美味しくナイよ。」
まん丸プリプリだよ。
「はにゃ、放して。」
ジタバタ、ジタバタ。
「山守の呪い祝、テイの闇だな。」
「・・・・・・ヴューン。」
狸だけど、今さら威嚇してもねぇ。
「人の言の葉を話す狸など、狩山には居らん。」
人の言の葉を話す犲もイマセン。ってツツ、使わしめ。居る、この先に居る。祝の力を持つ人が居る!
「ヴューン。」
ドコにでも居る狸ですヨ。キュルン。