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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
暗風編
1094/1589

12-12 姿を見せなくても


霧雲山系で一番大きいのは山守、その次に大きいのは喰谷山くたにやま。三番目に大きいのが狩山かやま



山守は特殊、いや特別。


たとえるならやしろを構える神は都道府県知事、御坐おわす山は法令指定都市。首相は山守神やまもりのかみ、官房長官は祝辺はふりべもり。かな?



ちなみに喰谷山は立入禁止区域ゆえ、入山するのは自殺志望者のみ。中心に在る喰隠くおから常に呻き声が聞こえるからか、人里も村も無い。


当然、社も無い。




狩山には多くの里や村があり、いただきをグルッと囲むように在るのが狩山九社。


九社に御坐すは狩りの神、使わしめは犲のおに。離れには社の司など、神に仕える人が居る。けれど他の社は狩山社かやまのやしろを含め、通いである。



緊急速報は山在神やまきのかみの使わしめすいと、山郷神やまざとのかみの使わしめときの遠吠えで伝達するよう依頼。


狩山九社は遠吠えを聞いた他社からの問い合わせがあれば、その都度つど対応する事になっている。




狩山社から直接アレコレ為さらないのは、使わしめ明寄あよ田龜たがめの妖怪だから。


大甕湖おおがめのみずうみで暮らす田龜の隠たちが川北の民の行いに怒り狂い、闇を巻き込みながら融合。妖怪になったのだが・・・・・・同時に巨大化。



日本産『水生昆虫』中の最大種だよ、迫力満点だよ。


体は褐色、扁平。頭部は小さく複眼は突出。前胸は幅広く前方に強く狭まり、後方に横溝アリ。で、前肢は捕獲肢。脛節の先に一本、鋭い爪を持ってマス。


体長は45~65mm。なのに小魚や蛙を捕まえるんだよ。それが巨大化したんだよ。・・・・・・コワイ。






「ほら、考えを変えてみよう。」


ガタガタ震える使わしめに、優しく御声掛け。


「どのように、変えるのですか。」


うるうるグスン。


「狩山社からね、田龜の」


「いぃやぁぁ。」


姿を見せなくても、思い出したダケで気絶。


「おやおや。」



バタンと倒れた使わしめを優しく撫で為さり、静かに社の外へ。



「山守の呪い祝か。」


出雲で幾度いくたびも耳にしましたよ。山守に御坐おわす神神が御力をふるわれたのに、はらい清める事が出来なんだトカ。


山郷やまざとから戻れば良いが。」


もし山の奥に進めば、里人に出くわす。人の姿をしていれば大きいし、見張られていれば身構える。


りに選って、たぬきに移るとは。」


気の弱い生き物だ。穴を掘るのも潜むのも上手うまく、木登りまで出来る。


「フゥ。」


この社に誰か居れば『危ない』と、『気を付けよ』と伝えられるのに。


「罠を張ろう。」


遠吠えにより狩山で今、何か起こっているのか知らされたのだ。同じ事を思いつかれた神神が、きっとアチコチに闇祓いの糸を御張り遊ばす。


「フッフッフ。」


腕が鳴る。




狩山神は山神、狩山九柱は狩りの神。他は大木おおきや大岩、滝などの三霊代みたましろ。森に、山にわざわいもたらす闇など要らぬ。




「ブルル。」


「珍しいね、明寄。寒いのかい。」


「いいえ。何だか、その。ゾワワと致しまして。」


「・・・・・・テイの闇に乗っ取られた狸、長いな。闇狸が諦めて、この山から出てくれれば良いが。」



狩山神の御言葉にウンウンうなづく明寄。その隣で『それはドウだろう』と思いながら、まどが小さく息を吐いた。


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