12-11 警戒警報
坦からの遠吠えで、何となく。
アラさま、申し訳ありません。『山守が嫌いなんだなぁ』『考え過ぎでは』なんて思ってました。ハァ、山守の呪い祝め。
社を抜け出して崖まで行き、嗚山や固山に向かって投げたのだろう。切り取られた闇は溪に落ち、望月湖に流れ着いた。
ソレが集まり力を付けて水の生き物、魚だろうな。水から跳ね出し鳥に掴ませ、四つ足に憑いたか。
「山郷神、急ぎ守りを固めましょう。」
「そうだな。迅、頼む。」
「ハイ。」
離れに顔を出し、社の司に詳細を伝えた迅。タッタと高台へ行き遠吠え。
狩山には他にも社があるのに、狩山社から使いが来たのは山郷社と山在社の二社。
全ての社を回るより、犲の遠吠えで知らせる方が早いから。
迅と彗は狩山で一二を争う美声の持ち主。その遠吠えは警報器の役割を果たし、狩山各社に急報。
迅の遠吠えが聞こえなくなって十数えたら、山在の彗が確認のための遠吠えをするので、聞き逃しても大丈夫。
「アオーン、オーン。」 イソギシラセマス、アブナイ。
危険の切迫に対して警戒するよう、犲の遠吠えが狩山に響き渡る。
「アォー、オーン。アォーン、オーン。」 ヤマモリ、ノロイヤミ。イキダヌキニ、ツイタ。
聞き取り易いよう、短く切って御届け。
狩山各社、大騒ぎ。
山守の呪い祝、テイは悪い意味で有名。その話は霧雲山系は勿論、霧雲山の統べる地に周知徹底されている。
「何てコッタイ。」
「山守の闇がココまで?」
神議り@出雲、最終日。一九社でコッソリ、情報交換会が執り行われマス。
解決した話だと、耶万のタヤと念珠の闇。良那の子、ヨシの悪たれっぷりとかネ。分からずに困っている事を話し、対策を練るんだヨ。
飲んだくれてバカリではアリマセン。
その話し合いに良く出てくるのが、山守の呪い祝テイ。
どんなにシッカリ大祓してもサッパリ。和山社に御坐す大蛇神の御力を以てしても、どうにもナラナイ。蛇だから手の足もナイけど、お手上げ。
思い切って化け王に御伺いしたが・・・・・・。
「山狩りだぁ!」
「和山社へ使いを!」
イザとなったら狩山を三重で囲み、大祓を執り行う。
祓いは山郷神、山在神、山藤神。山背神、山保神、山和神。山座神、山脈神、山衛神の九柱。
清めは、狩山神にお願い申し上げよう。
「こりゃ困った。」
狩山の真中に御坐す神神、ビックリ。
「犲、コワイ。」
狩山に御坐す狩りの神、九柱の使わしめは犲の隠。他の使わしめも狩山神の使わしめ、明寄のように獰猛とは限らない。
「これこれ、シッカリさない。」
山中にある石積みの社では、ドコもカシコも同じようです。野鼠や山兎、猿など、犲にパックンされる獣たち。ガクガクぶるぶる。
「狩山神からの言伝を、こうして遠吠えで伝えてくれているのだ。だからね、出て御出で。」
ニホンオオカミは最強のハンターだからね、怯えるのは当たり前。