12-7 狸の雄叫び
ゴンゴンごろごろゴンごろろ。
「うん、イイね。」
雷サマ、桴をクルクル。
「さぁて。」
遠方からユックリと、雷雲モクモク接近中。不貞腐れていた分ティ、キタきたキタァ! っと血気に逸る。
船舶のプロベラ型推進器を動かすように、尾鰭プリプリ急発進。望月湖で暮らす愉快な仲間たち、種類に関係なくギョギョッ。
「ヨッシャァ。」
胸鰭をバタバタさせ、喜びを表現。棘条を動かし第一背鰭を立て、水上に出して遊泳。発達した鮫の背鰭と違って控え目なので、水紋は細やか。
それでもバッチリ出ている。
「フッフッフ。」
ピチョンと潜り、落雷を待つ。
ゴンゴンごろごろゴンごろろ。ゴンゴンごろごろゴンごろろ。ゴロゴロゴロゴロ、ピッカァ!
雷サマのドラムソロが始まった。満ち溢れようとする情熱・熱気がグングン上がり、最高潮に達する。
ドドドドドドドド、ドッカァン!
イイ感じの雷が呼人山に落ち、地を伝って沢に流れ込む。勢いそのままに沢溜に到達。急川から望月湖面にビビビと広がった、その時。万全を期して真打登場。
鰭を動かし急浮上した分ティ、イイ感じに感電。小売店でパック詰めされた魚のように、ドロンとした目で側線を風雨に晒す。
「ピー!」 ヤッタァ!
腹を上にしてプカプカ浮かぶ鱒を発見した通りすがりの鵟、大喜び。捕食しようと急降下。素早くキャッチしたのが運の尽き。
「ピッ。」 エッ。
雷サマのドラムソロ、まだ続いてマシタ。
徒広い湖面から呼人山と狩山の間、風の谷を抜けようとした、その時! ピッシャァ。雷に打たれ、地上でピクピク。
「・・・・・・!」 アレ、モシカシテ!
やったぁ、ゴハンだぁ。嬉しいな。
「・・・・・・。」 モラッテイイノ。
キョロキョロ。
「・・・・・・。」 オナカスイテタンダヨネ。
通りすがりの腹ペコ狸、涎をジュルリ。
「ヴォリャァ。」
本気を出した分ティ、感電して腹を出した魚の意識をタコ殴り。ビックリして飛び起きた鱒、ビチビチ。
「・・・・・!」 オイソソウ!
狸、大喜び。
威嚇する時にしか鳴かない狸の心中を推し量るのは困難を極めるが、ウダウダ言ってイラレナイ。魚の体を奪ったのと同じ作戦を実行。
勝負所を逸するな! ビッチビッチと跳ねるプリプリまん丸ボディに釘付けになった狸が、アァンと口を開いたら決めろ。
「トリャァッ。」
大きく口を開くのを待って、思い切り跳ねる。と同時にビュッと飛び出し口中へ。速度を落さず頭部に侵入し、速やかに脳を制圧。
統制管理を行う中心部を奪えばコチラのモノ。闇を伸ばして強制的に口を閉じさせ、魚を食わせた。
「ヴューン」 トッタゾォ。
狸の体ゲット♪