12-4 応答ナシ
小魚から中魚、大魚へと出世? した分ティ。食って食って食い捲った結果、湖の主になったヨ。イェイ。
「どうしたモンか。」
丸丸ぷりぷりボディで考え中。
「大きくなっても魚は魚。」
塩蔵するホカ塩焼き、ムニエル、刺身などで御賞味あれ。って違う。
「水の外では生きられぬ。」
鰓呼吸だからネ。
「人に釣らせて食わせても、力が無ければ使えぬわ。」
どうすれば獣の体を奪えるか、真剣に考え始めた分ティ。
初めは四つ足より鳥が良い。いや待て待て、それより何より水から出ねば。水から出られても、ビッチビチと跳ねるダケ。
跳ねても遠くへ行けぬ、となれば戻る?
湖面に浮けばドウだ。
どうせなら腹を浮かせ、鳥に気付かせる。ガバッと掴ませ巣に持ち帰らせ・・・・・・れば、そのまま雛に食われるぞ。
掴ませたまま落ちれば、土の上で力尽きるだろう。
「フン。」
力むと同時に鼻孔から泡、肛門から糞が出た。
「スッキリせん。」
ニュルっと出たのに?
ウンウン唸っているのは分ティだけではナイ。流離山に潜むティ小も、洞で自作の詩歌を吟じている。
忙川から滑川に流れた闇が溺れかけた時、洞穴を発見。岩川との合流点、ギリギリ手前で上陸に成功。
フラフラになりながら川岸を進み、洞窟へ逃げ込む。
暫くすると喰谷山に潜んでいた切ティ同様、力を得るため川辺に罠を張り、他の闇を流し素麺の要領で掬い上げ吸収。
「みなさん、こんばんは。ティ小です。」
スッと腰掛け琴を膝に置き、小き絃をジャンじゃジャン、ジャジャジャ。じゃんジャジャン。
「♪ 暗い洞の中 見上げる光は アタシを狂わせる♪」
孤独を愛する古代のロッカー、琴を掻き鳴らしながら熱唱。
観客? 残念ながらゼロ。
あなたと別れて、どれくらい経っただろう。いつか迎えに来ると信じ、闇を集め続けた。光に怯えながら見つめる水面はキラキラ輝き、目の奥をブサリと突き刺す。
激しい痛みに耐えながら、闇でしか生きられない。そんな私に残されたのは、たった一つの思い出。
頭の芯まで痛いのに、それでも待つのはナゼ? 切り刻まれた魂が、ぬくもりを求め叫ぶのよ。お願い、ギュッと抱きしめて。
冷たい月が笑う夜、私は隠に怯えるの。いつまで待っても来ないなら、もう夢なんて見せないで。赤い涙を流しても、両の手をソッと重ねても変わらない。
ねぇ私、ちゃんと笑えてる?
「・・・・・・ハァ。」
霧雲山は大きいから、きっと他にも潜んでいる。そう信じ、ずっと生きて来た。
「辛いよ。」
川の上から流れる闇は、どれも酷く傷ついていた。
あの大崖から落されるんだ。そりゃソウさ、当たり前だよね。でも、いつかまた会える。
「信じてる、ずっと。」
切ティは喰谷山で、小ティは梅の湖で消滅。分ティは望月湖からの脱出を模索中。
ティ小は孤独に耐えながら、テイの迎えを待っている。
そのテイは特別仕様の壺に入れられ、祝辺の獄で悶絶。タップリ塩を振掛けられ、体内の水分が出て縮んだ蛞蝓状態。
ドッコイ、ちゃんと生きているゾ。
「応えろ、バケモノ。」
山越に潜む、ヴァンからの応答ナシ。