12-2 乗っ取り成功
望月湖に流れ込んだテイの闇は、水中を移動しながら融合。新たな仲間が来ず、ふやけてゆく。
「アァァ。」
山守の呪い祝、テイは次から次に奪った。祝の体を奪い、山守に溢れる闇を取り込んで力を蓄えた。
「テイめ。」
祝になるとオカシクなるのは、テイに奪われるから。その事に気付いた祝が、奪われる前に整えたのだろう。
「掛かったな。」
次の祝に選ばれる前なら、罠を仕掛けられる。
どんな罠なのか、何をしたのか分からない。けれどテイはマンマと罠に掛かり、捕らえられた。
「ワァァ。」
このままでは魚の体を奪えず、湖の底に沈むだろう。
魚の体を奪えなければ、湖の外に出られない。湖の外に出られなければ、獣の体を奪えない。獣の体を奪えなければ、他の闇を取り込めない。
「諦めて堪るか。」
タップリ水を吸い込んで、フワッと湖底に落ち着いた。そのままコロコロ転がって、穴にポコッと填まってしまう。
そのまま動けなくなり、静かになった。
「このままでは・・・・・・。」
ふやけてバラバラになった。軽くなったので、前より動けるがソレだけ。
「クッ。」
蜉蝣は直ぐ死ぬが、水辺を飛ぶ事が出来る。私は闇だが己で考え、動く事が出来る。が、今は。
「フッ。」
思うようにナラヌと悲しみ、望みを失う事は無い。
蜉蝣は交わり、卵を産めば日が落ちる前に死ぬ。けれど私は闇。ふやけても、消えて無くなる事はナイ。
周りを良く見ろ。ドコに何がドレだけ、どのような生き物がいる。
他との違い。弱み、偏り。捕らえて食らう時、どのように動く。生えているモノを食らうのか、動くモノを食らうのか、選ばず何でも食らうのか。
ザッと見た感じ、大きさはバラバラ。その全てを集め、融け合わせるには時が掛かろう。が、時なら幾らでもある。焦る事は無い。
小さいのは藻に化けさせ、小さな魚に食わせる。大きいのは魚の口に飛び込ませ、その体を奪う。
小さな魚を少し大きな魚に食わせ、少し大きな魚を大きな魚に食わせ、体を大きくする。
たっぷり食わせて太らせて、湖面を跳ねさせよう。鳥に狙わせ掴ませココから離れ、鳥に食わせて体を奪う。鳥を人に狩らせ、里や村に持ち帰らせ食わせる。
そうすれば、やっと奪える。
「はじめよう。」
湖に流れ込んだ闇を集め、融け合わせた。
大きくなったが動けなくなり、ふやけて散けた。がソレだけの事。また集め、一つになれば良い。
「先からパクパクぱくぱく。」
あの魚にしよう。少し小さいがココからでも、その気になれば飛び込める。ヨッ、ホッ、トリャッ。
「心持ち一つ、心根一つ。」
やって出来ない事はナイ。諦めるな! 深い闇は光をも呑み込む。ヨッ、トッ、ホッ。
「ちょうど良い頃合いで。」
早くても遅くてもイケナイ。口が閉じれば身を低くし、開けばスッと飛び込む。フゥ、狙え。今だ!
気合と根性で小魚の口中にダイブ。のんびりパクパクしていた小魚、平衡感覚を失い大パニック。
吻は開き切り、鰓蓋が忙しなくパタパタ。鼻孔からはプクプク、肛門からはドバッと出るモノが出た。
痙攣を起こしたのか、全ての鰭が細かく動く。
「ヨッシャァ。」
静かに湖底に沈んだ魚の体、乗っ取ったゾ。