11-133 大事だァ!
また知らない人だらけの地に送られると知ったタラが、タエに『オレを共に生きてください』と求婚。
いきなりプロポーズされ、ポカンとしたのはタエだけじゃナイ。
「ナッ。」
前足で踏ん張り、驚くクル。
「エッ。」
ニュッと頸を伸ばし、固まるシナ。
「ハァ?」
九尾をピンと伸ばし、凄むフサ。
「若いなぁ。」
と言いながら見開く、野呂神の使わしめピー。
「・・・・・・ピーさま、隠の世から何か。」
瞬時に回復したフサが問う。
「ん? いや何も。」
昼担当のピーは土竜と鼠が大好き。
畑を中心に巡回しているが、野呂の子が藁を固く縛った棒でバンバン土を叩いて回るので、何となく森に来たダケ。
土竜打ちが終われば、戻るツモリだったヨ。
「えっと。」
戸惑うタエに優しく微笑むタラ。
「ユックリ考えて、それから聞かせて。ね?」
急いで先読を始めた。
択んで選んでグルグル悩んで、また選び択んで末を見る。ハッとして選び直し、そして見た。大泉で、タラと幸せに暮らす姿を。
「・・・・・・はい。」
「オレ、待つよ。って、エッ。」
はにかむタエを見つめ、見開く。パァっと明るい顔になり、両の手を広げてニコリ。
「えっと、ん?」
コテンと首を傾げるタエ、そっと手を下ろすタラ。
そんな二人を見守る後見シナ、クル、フサ。その横でニヤニヤする、通りすがりの使わしめピー。
「帰ろうか。」
スッと手を差し伸べ、ニコリ。
「はい。」
その手を取って微笑む。
手を繋いで村に戻るタエとタラ。二人が『ただいま』と言って家に入ると、クルたちがピーに微笑みかける。ニコッとしたピー、影ポチャ。
「ヒャァッ。」
キョロキョロ。
「ピーさま。」
ハッ!
「山守の呪い祝、テイの闇について。ピーさまはドコまで。」
パチクリ。
「そうですか。」
ウンウン。
「私が消して無くした喰谷山の闇、とりあえず『切ティ』と呼びましょう。切ティは忙川から烈川に流れたテイの闇が垂水洞に入り込み、力を得ようと川を流れる他の闇を掬い上げ、取り込んでいました。」
フサの話を聞き、ポカァン。
「私が消して無くした梅の湖の闇。小ティは切ティが掬い損ね、梅の湖に流れ込んだ闇を歌で呼び寄せ、取り込んだのでしょう。」
シナの話を聞き、嘴が外れそうになる。
「私、滑川を下り見つけました。流離山にテイの闇が潜んで居ります。」
クルの話を聞き、止まり木からポトッと落ちた。
喰谷山と梅の湖に潜んでいたテイの闇は消えて無くなったが、流離山と望月湖には残っている。まだ潜んでいる、消えずに残っている。
おお、大事だァ!
「私、急ぎ社に戻らねば。」
羽をバタつかせ、トットと跳ねてフワッと飛び立つ。
「では、そろそろ。」
仲良く狐火に乗り、タエの元へ。
山守編でした。暗風編に続きます。お楽しみに!