11-131 タエを守るために
男ってのは食うか狩るか、プシュッと出す事しか考えられない生き物なのかね。
「信じられない。」
姿も形も整っているし、物知りで物持ちだ。けど子だよ、十一の子。それを何だい。嫌らしい目つきでジロジロ、淫らな言の葉を投げ掛けニヤニヤ。
「何が『信じられない』んだい、ミオ。」
「聞いてくれるかい、マヨ。」
酷い話だ。何も知らない子でも嫌な思いをするだろうに、いろいろ知っているタエは・・・・・・。
北山社の人、いや北山は強い祝の力を求めた。
アチコチから祝の力を持つ子を、人を集めて離れに放り込み苦しめる。二つの力を持つ子を産ませるため、違う力を持つ人を襲わせる。
オカシクなる薬を盛られ、獣のように腰を振る男。逃げられないよう手足を縛られ、孕むまで打ち込まれる女。
それも子の目の前で繰り返し、繰り返し。
釜戸社が動き、北山から多くの人が救い出された。
生き残った男は死を望む。その願いは叶えられたが、心と魂に深く刻まれた傷は消える事なく、いつまでも。
「タエは、その。」
「木に触れ、楽しそうにしている。」
マヨ、思わずポカァン。
「私が思うに、天つ神の御力だろう。とても清らな何かで包まれ、守られているよ。」
「ミオ、それは。」
「祝辺では無い。大泉か鎮野の社憑き、継ぐ子かな。」
「野呂は茅野から託された子を、こんなにも早く傷つけてしまった。このままではイケナイ。」
急ぎ社の司、禰宜、祝、祝人頭、祝女頭が野呂社の離れに集められ、声を落としてジックリと案を練る。
社でも山長でも村長でもナク、狩り人に託したのは良くなかった。
オウたちが悪いのでは無い。
豊かな村から来た、他とは違う子が手の届くトコロに居る。ソレが男たちを浮つかせ、思い違いをさせたのだ。
どうすればタエを、タエの心を守れるだろう。
『急ぎ大泉へ』と山長に言われ、『まだ早かろう』と思ったが違う。野呂の誰にも、オウにもヒロにもタラにも気付かれず、スルスル話を纏めなければ!
「うぅん。」
何かがオカシイ。社の人たちは、まぁね。いつもアンナだけど、それでも違う。何か大きな事を隠している。
「ふん。」
確かめよう。コレはオレのカンだけど、隠しているのはタエの事だ。
タエを守るためにイロイロ考え、動いているんだろう。止めないよ。でも何を考え、動いているのか知りたい。
「ウッ。」
危ない危ない。風の刃でザックリ、切られるトコだった。
こりゃ気を引き締めないと。土をボコッと出来る祝女頭も強いケド、風を纏う禰宜は恐ろしい。迷わず刻むからね。
ヨシ、祝だ。心を読めるケド、考えている時に話しかけると洩らすんだ。ポロッとネ。出てきたら少し離れて見張り、ブツブツ言い出すまで待つ。
アッ、出てきた。目が合った? もう気付かれたよ。あぁあ、あの顔はマズイぞ。笑って手を振りだした。
「タラ、こちらへ。」
「はい、タタさま。」
何だろう。良くナイ話だと思うけど、嫌な感じはシナイんだ。ってコトは、タエには良い話?
「あのな。」
タッと駆け寄ったタラの肩を抱き、ニコリ。
「タラ、タエが好きか。」
スッと顔を近づけ、小さな声で問う。
「はい、好きです。」
「一度しか言わん、良く聞け。」