5-35 目覚めた力
考えるな、感じるんだ。良く分らんが、『やれば出来る』って、姉さんが言っていた。
ブワッと光が強くなる。そして、見た。コウは、確かに立っている。しかし、見える。高いところから、見下ろしている。乱雲山の全てを。今、どこにいるのか。どこに何があるのか。どう進めば、帰れるのか。
「凄い。オレに、こんな力があったなんて。爺様が言っていた宝の力って、これか。」
「オイ、人の子。オマエ、どうする気だ。」
「雲井社へ、帰る。」
「そうか。気をつけてな。」
・・・・・・ミツも、爺様もいない。ということは、生きてる?
まず、ここから出よう。なるべく、危なくない道を行こう。弓も、矢もある。戦おうと思えば、戦える。戦わずに済むなら、その方が良い。
「コウ、待って。私を幸せにして。」
「断る。」
「ツウの、どこが良いのよ。」
「すべて。」
これだけハッキリ言われても、言い寄るヒサ。ある意味、凄い。
「ヒサ、そこまでだ。」
「ハァァァ? ナニ、きぃギャアァァァ。」
ベリッと魂を剥がされたヒサ。コンの狐火に焼かれ、灰になった。
「キラ。釜戸山へ、届けてくれ。」
「分かった。」
ヒサの魂を掴んで、ナガの元へ。
「・・・・・・。尾が多いけど、狐?」
「そうだ。コウ、迎えに来た。」
「あの・・・・・・。」
「コンだ。」
「コンさん。オレ、生きていますか?」
「生きている。」
「ケッ、もう終わりか。もっと粘れよ。」
「久しぶりだな、悪意。」
「ゲッ、猫股。」
「逃がさん。」
「猫が狐に勝てると思うな!」
「狐もいるぞ。」
「使わしめ如きが、野弧に勝てるとでも?」
「ギャアァァァァァ。」
コウに憑こうとして、力を失った。
「人の分際で、許さぁぁぁ」
慣れた手つきで、悪意の魂をベリッと剥がす。
「守。お願いします。」
「守って、ま」
チョンと触れただけで、浄化完了。一瞬で、すべて祓う。畏る可し。
「ありがとうございます。」
祝辺の守。微笑みスッと、消えた。
「・・・・・・?」
「悪意は、海の向こうから来た。」
「祝辺の守は、強い。」
「あの・・・・・・。」
「ゴロゴロだ。」
「ありがとうございます。ゴロゴロさん、コンさん。」