11-130 光陰矢の如し
テイの闇だらけの洞、水の中で歌う小ティ? 何と言うか・・・・・・ゆっくり休んで。
「タエは、どうだった。変わりナイか。」
フサに問われ、クルが微笑む。
「木を通して鎮野と、楽しそうに話していたよ。そうそう、判った事がある。」
「何だい、クル。」
「タエが幹に触れると、木がポワッと光るだろう?」
「あぁ、アレか。」
シナがユックリ、ウンウンと頷いた。
「シナ、フサ、落ち着いて聞いてくれ。」
ゴクリ。
「アレはな、天つ神の御力だった。」
えぇっ!
タエは良山を離れる朝、マルとマルコの山歩きに付いて行きました。あの時マルと手を繋ぎ、木を通して聞いた声の主。
三人とも鎮野の継ぐ子でした。
初めに声を掛けた満はムメとハルの倅として小柄で、光の珠を持って誕生。山守から守るために社を通して、鎮野社に養子に出された五歳児。
次に声を掛けた舞は深山社の祝と禰宜の娘として、光の剣を持って誕生。祝辺の守セノに見つかり、社を通して鎮野社に引き取られた五歳児。
その次に声を掛けた紅は樵と織り人の倅で、三つで御神木に選ばれた『木の子』。満や舞と違い、鎮野で生まれ育った八歳児。
「思い出した。そうか、あの光。」
九尾をワサワサさせながら、フサが一言。
「稲穂のように輝く雲から二つ、光の穂先が見えたが・・・・・・そうだったのか。」
シナが唸る。
「早いモンだなぁ。」
お座りしたまま、遠い目をするクル。
「ん。」
「ん?」
「んん。」
二妖一隠が見合い、パチクリ。
「アッ。」
「鳥の谷。」
「鳥の川。」
額を合わせ、息を呑む。
「今となっては昔の話だが。」
「とても清らで大きな雲から、光の筋が一つ。」
「鏡を賜った娘、死ぬ前に隠したトカ何とか。」
中つ国に光の鏡、光の珠、光の剣が揃った。玉と剣は霧雲山、鎮野の継ぐ子が持っている。鏡は今、ドコにあるのだろう。
はい、その通り。乱雲山に御座います。
現在の所有者は『和み』の村の織り人、ツウ。
『和み』はコウとツウが、子の家で暮らす皆と力を合わせて作った村。長を務めるのは伝説の狩り人ジロの孫、コウです。
「まぁ、ソレはソレとして。」
シナが仕切り直す。
「ウム。野呂の山長はタエを大泉に託すと決め、動き出した。」
「それは、いつ。」
「昼過ぎだ。」
フサに問われ、クルが答える。
どうししょう。タエが、タエが遠くへ行っちゃう。ほんの少しだけど、やっと落ち着いたんだ。なのに、また知らない人に囲まれて暮らすの?
トモが社の横で、皆が見ている前で尻叩きされた。猿みたいに赤い尻じゃ歩けないから、狩頭が肩に担いで溪山に運んだ。
でも、またタエを嫌な目で見るヤツが居る。
「シッカリしなきゃ。」