11-129 御疲れ様
流れ流され、流れ着いた先は湖でした。
「♪ ああァ上がれない 水面キラキラだぁあぁよ ♪ ・・・・・・虚しい。」
水中のど自慢大会。観客ゼロ。
「昔は良かった。」
遠い目をして語りだす。
「ボコッとヒョイっとポイッとされて、風に吹かれて川ポチャ。」
同じ闇から取り出されたのに、いろんな闇があるんですね。親の組み合わせが同じでも兄弟、姉妹で違うから当然か。
「寂しくなんかナイんだからね。」
寂しいんだね。
「この湖ってさ、小さいケド深いのよ。」
霧雲山は不思議な山だ。
大きな湖が多いが、その殆どが中腹にある。ナゼか山越には少ないが、他はアチコチからコンコンと水が噴き出している。
霧山との間に谷が出来た事で湖の底が抜け、崖からドッと流れ落ちる地抜滝。
大泉を挟んで大滝湖と白滝湖からドウドウと流れ落ちる牙滝は、渓流を激流に変えてしまう。
どう考えても保水能力を超えているのだが今のところ、崩れる気配は無い。心配なのは滑り崖が迫っている望月湖と梅の湖だ。
望月湖は西北から南東まで開けているが、梅の湖は鉢の底。逃げ場が無いのに烈川から、大量の水がドドドと流れ込む。
鉢は鉢でも擂鉢ではナク植木鉢。溢れずナミナミと湛えるが、何時まで持つのか分からない。
「潜ったんだけどさ、知ってる?」
ステージ上から語り掛けるも、観客は・・・・・・プランクトンが居た!
「底んトコにナント縦の刻み目、見つけちゃいました。パチパチパチィ。」
あの闇、テイのに違い無い。が何となぁく、捕まえ辛いぞ。ハッ、それが狙いか。アブナイあぶない。
「キャハッ、ありがとう。小ティ嬉しい。」
ステージネームなのかニックネームなのかは不明だが、梅の湖に潜伏中の闇、『小ティ』が手を振る。
「妹みぃんなにオシラセ。」
小ティ、男だったのか。
「兄にもオシラセ。」
いや女か。
「小ティは闇から川亀にぃ、なります!」
物凄い早さでシナ目掛けて突進。けれどシナは慌てず騒がずスッと、甲羅の中から袋を取り出した。
大蛇神の愛し子マルが祝の力を込めて織り、チクチク縫った特別製。旅立ちの前日、大蛇社で受け取った品の一つデス。
闘牛士のように胸を張り、マントを翻すようにサッ。開いた袋の口に飛び込んだ小ティ、大慌て。
逃げようにも逃げられず、袋の底で清められシュルシュル消滅。
妹兄の皆さま。小ティは闇を卒業し、清らに輝く光になりました。どうぞ、お元気で。
「フゥ、疲れた。」
精神的に、ね。
「エッ、シナ?」
いつもはシャカシャカ高速移動するのに、ユックリ進むシナにビックリ。
「やぁフサ。どうだった。」
「片付いたよ。シナは、どうだった。」
「マルさまに頂いた品でね、サッと清められたよ。」
「それは良かった。」
タエとクルが待つ野呂へ戻るシナとフサ。二妖とも少しホッソリした、ような気がします。
御疲れ様。