11-128 高性能妖波探知機、始動
死にたがりが入る山、幾らでも奪えると思っていた。なのに来るのは死に懸けの病持ち、窶れた年寄り。
スッカリ弱った体を奪っても、直ぐに壊れて捨てるダケ。命知らずの荒くれ者でも遠ざける、それが喰谷山。
「やってらんねぇ。」
居るには居るんだよ、若いのも。腐る前に見つけるのが難しくてね。骨じゃドウしようもナイんだよ、骨じゃ。ハァァ。
こんだけ大きけりゃウハウハだって、取っ換え引っ換え出来ると思ったのに。思ってたのと違った。騙された。
・・・・・・って、誰を責めりゃイイんだよぉ。
「ハァァ。」
ボコッと外されヒョイと抜かれ、ポイと投げられ崖下へ。山が崩れて里だか村だか埋まってた。
『このままじゃ』ってんで探したよ、闇。クワッと見開き休まずさ。なのに少しも見つからナイ、見当たらナイ。
朝から朝までフラフラになりながら探して、やっと気が付いた。残らず清めてから御隠れ遊ばしたんだって。
「いつだったか、夜。」
酒を持ってさ、飛んできた烏を見つけたよ。使わしめか社憑きか、放たれて直ぐか判らない。ケドもうチョイって時に睨まれ、動けなくなった。
ありゃバケモンだ。仕掛けようとしたダケなのに、ゾッとしたよ。黒い羽した赤目の化け烏。
思ったよりヒドイね。行倒れも居るが死んで戻れず、フヨフヨ集まった隠が多い。
喰隠に入れば終わるのに、怖くて近づけないんだろう。谷やら洞に潜み、ガタガタ震えている。
「焼くか。」
狐火は三つ。青い炎は全てを、白い炎は動かないモノを、青と白の炎は動くモノを焼き尽くす。
「いや、その前に。」
喰谷山を狐火で囲み、亡者を焼くのは構わない。けれど真中にある喰隠は隠の刑場。人の世に在るが隠の世、和山社の御許しを得なければ。
「やるか。」
九尾をワサワサさせ、捜索範囲を喰谷山に指定。喰隠を除外し、ピンと毛先を伸ばす。百、千、五千、八千、二万、十万。
「ヨシ。」
右の前足を浮かせ、左から右にスッと動かす。ポポポンと出た狐火がフワフワしながら整列。情報を元に役目を割り振り、目を動かす。
「行け。」
フサが号令を掛けると狐火が魚鱗の陣で突出前進。後方部隊は少しづつ左右に広がり展開し、小隊を引いて離脱。担当地域へ向かう。
暫くすると調査結果の報告が入り、闇反応が強い地点を特定。喰隠南東部、烈川沿いの鍾乳洞を制圧。
「・・・・・・は?」
山守の大崖で見た赤目烏を思い浮かべていたら、狐火に囲まれていた。赤い炎なら強行突破できるが狐火、それも青と白の炎から逃げる術は無い。
「マズイ。」
忙川から烈川に流され、ギリギリで鍾乳洞を発見。
力を得るため川辺に罠を張り、他の闇を流し素麺の要領で掬い上げ吸収。社憑き対策として分身し、林立する石筍に一つづつ被せた。
が、これダケの狐火。
「アッ」
纏めて焼かれ、切ティず消滅。喰谷山に潜んでいた闇の駆除が完了した。
これは余談になりますが、妖狐の戦闘力について少少。
狐火の明るさは豆電球から探照灯、火力は燐寸から火炎放射器、威力は水鉄砲からカノン砲といったトコロでしょうか。
妖齢に関係なく使い熟せます。
尾の数で強さが決まりますが、九尾の野狐が本気を出すと大変よ。
悪の組織や秘密結社に狙われ、捕縛されたら最後、血を抜かれ毛を剃られ、鼻先から尻の穴まで隈無く調べられるでしょう。
狐権? 認められまセン。