11-126 心ときめき
着物も履物も持ち物も良い品ばかりだから『幸せだった』と、ずっと『守られて暮らしていた』と思ってた。
オレ、愚かだな。何にも知らないや。もっと学んで力を付けて、しっかり守れるようにならなきゃ。
タエだけじゃない。いつか生まれる子も守れるように・・・・・・って、アハ。アハハ。まっ追い追い? ゆっくり?
「十二になるまで待つんだぞ、タラ。」
「エッ、父さん。なに?」
「『なに?』じゃナイ。」
パコン。
外に出て頭を冷やそうと、『風に当たってくる』と言って出たタラ。なかなか戻らない倅を心配し、タエをヒロに任せてオウが外に出た。
で直ぐ、月明りを浴びながら一人で百面相するタラを発見。
苦笑いしながら近づき、声を掛けるも上の空。『いやぁ、でも』とか『いやイヤいや、早いだろう』とか、それはそれは面白い事になっている。
倅の姿に昔の己を重ね、思わず赤面。『あの時は若かった』とナゾの言い訳をしてから、タラの肩をポンと叩く。
「判り易いヤツめ。」
「ん。エッ、声に出てた?」
「いいや、顔に出てた。」
顔を赤らめるタラに『父としてハッキリ、シッカリ伝えなければ』と気を引き締める。
どんなに好きでも思いを伝えず、突っ走ってはイケナイ。『好きだから』とか『奪われたくない』とか、どんな言の葉を選んでも許されないから。
好きなら『好き』と口に出して伝え、好いてくれているか確かめる。
他に好きな男が居るなら幸せを願い、黙って身を引く。ソイツが女を泣かせる悪い男なら『ごめん。悪いケドお勧め出来ない』と伝え、男をコッソリ呼び出そう。
拳で語り合い、どうにかナル事もアル。
「・・・・・・父さん。」
「何だい。」
「母さんの思い人、呼び出したの?」
・・・・・・。
「呼び出したんだ。」
「うん、まぁ。」
ジィィ。
「けどオレが手を、コホン。拳で語り合う前にノビてたんだ。」
「えっと、それって・・・・・・母さんが?」
「強いからなぁ、ヒロは。」
ポリポリ。
力じゃ勝てないから口を出す。女は弱いが母は強い。いろいろ聞くケドどの家も、男より女が強いと仲良しだ。
里でも村でも同じ。女が強いトコは暮らし易い。
犬でもソウさ。
好きでもナイ話を楽しそうに聞き、諍いになったらドウにかして勝たせる。黙って負けて『敵わないや』と褒める。
「父さん。オレ、タエに思いを伝えるよ。」
「オウ。」
「でさ、思い合えたらオレ。」
「ん?」
「いつか野呂を出て、他で暮らすかも。」
「そうか。ドコで誰と何して暮らしても、タラはヒロとオレの子だ。父になっても爺になっても、ずっと変わらずウチの子だ。」
ワシャワシャとタラの頭を撫で、ニカッと笑うオウ。チョッピリ照れながら心の中で、『敵わないや』と呟くタラ。そんな二人を見守るヒロの横で、タエは思った。
このドキドキは・・・・・・何かの病かも! と。