11-121 啖呵を切るより
アァッ、どうなっている。ナゼ何も言わん。
石室に隠した闇が消えた、奪われた。地涯滝から落した闇は残ったが、望月湖に沈んだまま動かん。
このままでは、このままでは体を奪えない。
「ここから出せぇ。」
ジッタンバッタン。
「出しやがれぇ。」
ドン、ドドン。
「諦めんぞォ。」
グワングワン。
山守の呪い祝、体を求めて大暴れ。
壺に罅が入っても、割れてしまっても予備が二つある。祝辺の獄は強化され、ひとつ守が祓い清めた。どう前向きに考えても脱獄不可能。
それでも山守の呪い祝、テイは諦めない。
己の闇を植え付けた生き物に『助けろ』と呼びかけるも、その生き物は『我関せず』といった様子。当然である。
不本意ながらテイに闇を移植されるも自我を保ち続け虎視眈眈、己をテイごと消滅できる存在の出現を待ち望んでいるのだ。
諦めませんよ!
「闇を植えてやったのに、まだ話せんのか。え?」
・・・・・・。
「やい、悔しくナイのか。」
・・・・・・。
雨乞いに失敗した巫は死後、婚約者が生贄として殺されるのを見て闇堕ち。巫覡を廃止させようにも手段が無く、器を求めていた蝙蝠妖怪ヴァン同化。
吸血されて瀕死の雷獣を取り込む事で実体化し、祝に取り憑いて巫覡を廃止させるも消滅するダケの妖力が足りず、地中で仮死。
巫の名はウロ、覡の名はムナ。雷獣の名は不明。輪の外だが、山越の水脈に潜伏中。
塒にしている洞は、流れの早い水中を縫うように進まなければ辿り着けない所にある。
誰かの体を奪わない限り、テイには思いを伝える事しか出来ない。
「地の底から救ってやったのに、何だ。」
・・・・・・。
「目を覚ませ、化け物!」
・・・・・・。
化け物に化け物と言われても、痛くも痒くもないヨ。
というよりテイ。思いを伝えるなら、よく考えましょう。キュンとするような、ドキドキするような言葉を選びましょう。
暴言を吐くより褒めて、啖呵を切るより感謝して。言われて嫌な事は言わない。されて嫌は事はシナイ。グニャリと歪められた心は簡単に壊れる、砕け散るんだよ。
そうなれば手遅れ。
「黙れ。」
あまりにも煩くて、ヴァンもウロも耐えられなくなりました。
「ハッ、やっと出たのがソレか。まぁ良い。サッサと助けろ、今すぐ。」
「無理だ、妖力が足りん。」
「は?」
「ココから出る力が足りない。だから動けない、出来ないから諦めろ。」
「こォの、〇×△! それでも※□◇か。え? ソンナだから・・・・・・」
クラッ。クラクラ、プッシュゥゥ。
妖力不足を理由に拒否したヴァンを罵りながら、再起不能になったテイ。ドロンドロンになって壺の底に沈む。
闇を補給したくても、祝辺の獄はキラッキラ。
テイの個室は特別仕様。月読尊の御力が含まれた粘土を心が読める祝が捏ね、ジックリ焼き上げた逸品。
チョットやソットじゃ壊れません。