11-108 我らが守る
野呂山は良山より小さい? のかな。
良村ってね、良山が大実山だった時、暮らしていた人が切り開いたんだって。だから頂にあるのに平らなんだって、シゲさんが言ってた。
村の周りは崖だらけで危ないから、子だけで囲いから出ちゃイケナイの。犬飼いは山歩きするから、朝と夕に出られるケドね。
そうだ、マルが言ってた。大木には清らな力が流れてるって。ヨシ、探そう。
「タエ、タエ。」
「はい。お呼びですか、ヒロさん。」
「いらっしゃい、こっちよ。」
良山は良村一つだけど、野呂山は釜戸山と同じ。幾つも村がある、にしては静かね。田も畑もキラキラが足りない。
添野も茅野もキラキラで、良村はキラキラのフワフワだったわ。
タラもヒロさんもガリガリじゃナイし、鷲の目も。だから食べ物は有る、と思う。
ゾワゾワするのはナゼかしら。誰か、いいえ。人じゃナイ何かに見張られている。
困ったわね。大木を探すの、難しそうだわ。
「気にするな、タエ。」
「我らが守る。」
「シッカリな。」
・・・・・・何かしら、泡? 私、泡の中に居る!
「山守の民と祝辺は力を求める。」
「親から子へ受け継がれる力。」
「光の雲から授けられた、清らで強い力。」
マルが言ってた、あの?
「タエは人だからな、姿は隠せん。」
「姿は隠せんが、力を弱く見せる事は出来る。」
「それに『守り袋』。」
マルから貰った?
「『清めの力』を織り込んだ布に、『守りの力』が込められた水の石。」
「二つの力が持つ者を守り、清め続ける。」
「無くすでナイぞ。」
ありがとう、マル。皆さん。
比べちゃイケナイけど、良村って豊かだったのね。
知ってたわ。添野や茅野よりキラキラしてたし、鶏を飼ってたし、他にもイロイロ有ったし。
良山も豊かよ。食べられるキノコや木の実、春にはタケノコだって採れたもの。
稲の実、小さくて細いわね。
エッ何これ! 実が少ない。コッチは白いわ。水にも日当たりにも恵まれているのに、土が悪いのかしら。いいえ寒さに弱いの、冷えるのよ。
良村の稲は早稲と、寒さに強い・・・・・・。
「どうしたの、タエ。」
シゲさんは獣谷のゲンさんから、霧雲山の種籾を貰った。寒い山でも育つ稲だから、良村でも育つだろうって。
ゲンさんの里は良い人、隠かな。力を持ってる長とか臣とか、社の司とかが後見なんだろうね。
木菟や鷲の目がイロイロ届けてくれるんだモン。
「稲が珍しいのかな。」
そう、そうよ。寒さに強い種籾を持ってなきゃオカシイわ。だって野呂も霧雲山、祝だって居るのよ。なのに、どうしてコンナなの。
もしかして野呂だから?
祝辺の守にイジワルされて、寒さに強い種籾を貰えなかった。取り上げられた。いいえ違うわ。山神の御力が弱まって、しまった?
「そんな!」
「エッ。」
急に立ち上がったタエに驚き、タラが尻餅をつく。
「あら、立てる?」
ニッコリ笑って、タエがタラに手を差し伸べた。
「うん。ありがとう。」
と言いながら『オレが守らなきゃ』と思うタラ。タラの耳が赤くなったのに気付き、心の中で『あらぁ』と騒ぐヒロ。
見守り隊はタラに対して、警戒色を強める。