11-99 融かされるって
お腹いっぱい御馳走を食べ、グッスリ眠る良い子たち。ワンコもスヤスヤ、夢の中。一方、大人は仕入れた情報を元に話し合う。
議題は、良村の安全保障について。
早稲の生き残りにより作られた良村は、新しいが豊かで強い村だ。
実戦経験を積み、磨かれた技術を導入。金城鉄壁の要塞と化した良山に侵入すれば、百戦錬磨の強者でも落命は必至。
無傷で良村に到達したのはアンリエヌ国、化け王臣下ブラン。傷だらけで良村の外に辿り着いたのは天霧山、矢弦社の忍び『雲』。
以前は霧雲山、野呂社の忍び『鷲の目』、および野比社の忍び『木菟』も辿り着いた。
けれど忍びを徹底調査し、強化された今じゃ無理。最強忍び軍団が本気を出しても到達不可能。
一人か二人は三の丸で瀕死の重傷を負い、谷底で死ぬだろう。
「ハッ、何が『国を一つにする』だ。その前に真中の七国を纏めろ。」
カズが毒突く。
「早稲と風見を裏切ったんだ。骸の山に毒の川、食べ物に困ってバタバタ死ぬさ。」
ノリがサラリと、オソロシイ事を。
「耶万に仕掛けりゃバン、松田に仕掛けりゃプラン。」
センも負けてナイ。
「松田の縄張りに隠の国、明里だっけ?」
ムロが問う。
「そうそう。王は隠、長は人。合いの子を引き取って育ててる。」
シンが答えた。
「王がコロコロ変わるから、七国ともバラバラの大荒れ。なのに戦、戦、戦。」
シゲの声が低い。
「落ち着きなよ。」
タケが一言。
「そうよ。今は皆の命と暮らしを守りながら、南のをドウ片付けるかって話でしょう。」
コノがズバッ。
「そうだな。」
コタが微笑む。
南から持ち帰った情報、忍びから得た情報、早稲と風見が掴んだ情報を合わせ、整理する。
「中の東国でキナ臭いのは大貝山の統べる地。」
「津久間、畏れ山、斑毛山の統べる地は落ち着いた。」
「越道山、神成山、具志古の統べる地は戦に備え、守りを固めている。」
「中でゴチャゴチャしてるのは霧雲山の統べる地だけ。」
流山が編入された事で、良山周辺が戦場になる可能性は下がった。
けれど霧雲山南部で前線に出せるのは川北、北山、武田、豊田、東山。玉置と三鶴は後方支援。川田と馬守は中立の立場を崩さない。
釜戸山や日吉山のように、山の中で助け合って生きられるなら籠るだろう。
「流山には里も村も国も無いが、南のは知らない。いや、耶万社のは知って黙ってる。」
「曲の川口は具志古にある。けど大浦川は大貝山の外れ、万十までは上がれる。」
「万十と氛冶が組み、大浦も加わった。「大浦の川口に兵を置いて、ずっと見張っている。」
「浜木綿と大磯川はナイ。椎の川は大きけりゃ、暴れ川まで上がれるぜ。」
やまとのは舟だが大陸のは船。
西国なら手に入れられる、作り手を呼べる。真中のは七国ともギリギリ。船を手に入れたり作り手を呼ぶ事は出来ない。が。
「保国、早貝。松田よりヒドイぜ。」
ずっと黙っていたセンの目がギラリと光った。
「ウム。がな、椎の川口は明里の地。悪しいのは松川に入り、融かされる。」
大蛇の一言に一同、ポカァン。