表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
山守編
1041/1595

11-92 悪いが耐えてくれ


いつか良村よいむらを、良山よいやまから出る日が来る。分かっていた事なのに私、とっても怖い。


添野に戻っても父さん、母さんも居ない。


幸せに暮らしていたのに先読できると知られ、豊田に売られた。夜まで待って豊野に逃げて捕まって、北山にポイと売られた。


あの時は器が小さくて、何にも見えなかったの。



釜戸山から茅野に移り、ピキピキとひびが入った。耐えられなくなった時、良村から迎えが。


良山に入って直ぐ、スッと軽くなって・・・・・・マル。私マルから離れて、良山から離れても生きられる?


暮らせるかしら。






「クゥン。」 ドウシタノ。


どこか痛いの? タエ。


マルはいわおの祝とね、お話してるんだ。スゴイよね、岩に掌を当てるダケで心が通じるんだよ。


タキは段段畑だんだんばたけ、コノは洞の倉に居るね。


「マルコ。」


屈んだタエは頬をペロンと舐められ、小さく微笑む。


涙がポロポロ流れ、止めようとしても止まらない。マルコを抱きしめて直ぐ、すすり泣く。






怖い、こわい怖い恐ろしい。判ってる。私は良山を出て霧雲山、野呂から大泉へ移り住む。


幾度いくたびも試した。変えたくて幾度も、幾度も幾度も。択んでも選んでも末は同じ。でも私、ずっとココに。良村で暮らしたいよ。



どうしよう、震えが止まらない。


婆さまも母さんも、娘を逃がすために戦って死んだの。爺さまも父さんも、体を張って守って死んだ。殺されたのよ、みんな。


私もね、娘を逃がすの。


母から娘に受け継がれる力は、他より強いんですって。だから祝辺に、おにの守に狙われる。






「タエ。」


「・・・・・・マル。マルぅ。」


膝をつき、幼子おさなごのように手を伸ばす。


むせび泣くタエを黙って抱きしめ、その背を優しくポンポンした。


「クゥゥ。」 ナキナサイ。


いっぱい泣けば良いんだよ。泣いて泣いて、心が軽くなるまで泣けばスッキリする。


ボクもね、釜戸山に居た時は重かった。マルにギュッとされてスッとなって、そりゃもうビックリしたよ。



穢れを清める時、塩を盛るでしょう?


塩はショッパイ、涙もショッパイ。だからね、涙は心に溜まった悪いのを清める水なんだ。どんどんドバドバ流しちゃおう。






「ウム。」


こりゃマズイ。背に乗せて運ぶツモリだったが、眠っている間に籠に入れて運ぼう。


谷河たにかわを出たのが森を抜け、小出こいでに入った。小出神こいでのかみの御力により隠され、離れで知らせを待っている。



小出社こいでのやしろには祝が居らず、山守や祝辺から見向きもされぬ。おとりを隠すには持って来いの隠れ里だ。もう動き出している。


今から変えれば気付かれる。だからな、タエ。悪いが耐えてくれ。


「大蛇神、そろそろ。」


小出神の使わしめ、青白あしろこうべを垂れる。


青白はゲンジボタルの隠。体力は無いが通力は強く年中、昼夜を問わず発光可能。蛍火で幻を見せ、敵を攪乱する事が出来る。生者より死者、特に隠に有効。


ちなみに谷河の子、ノブを護衛しているのは社憑き夜光よひ。無数の蛍の隠が融合し妖怪化。体力気力光度も青白より強いが、通力は並。


「分かった。」


大蛇社おろちのやしろから小出社へ。






祝辺は隠を削減する気らしい。ならば叶えよう。



「大蛇神、お待ちください。」


「ん、なぜ止め為さる。」


「アレは社憑き。隠は隠でも、隠の守とは違います。」


隠の守と違い祝の力を喪失。霧雲山の統べる地からは出られないが、霧雲山からは出られるので情報収集員として働く。


体力気力ともに最弱、通力は無い。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ