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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
乱雲山編
104/1570

5-31 嫌な予感ほど、当たる

乱雲山は、厚い雲に覆われている。心をゆるめると、谷底へ真っ逆さま。


慕い恋するツウのため、ツウと幸せに生きるため、入り組んだ山道を、確かめながら進む。




霧雲山、乱雲山、天霧山あまぎりやま。霧雲三大霊山の中で、最も強いのが、霧雲山。霧雲山を守るのが、祝辺の守。その言の葉は、重い。人も妖怪も、誰も、逆らえない。


祝辺の守は、一人ではない。人としての生を終えても、強い力を保ったまま、霧雲山を守りつづける。その魂は美しく、決して歪まない。



コウは気づいていた。霧雲山ではなく、乱雲山に来たのは、祝辺の守が決めたから。


ツウには、今は眠っているが、何かの力がある。オレはツウを守るために、稲田の村を出た。そうとしか思えない。



昔から知っている。



優しいな、とは思っていた。好きか嫌いかと問われれば、好きだと答える。それくらいにしか、思っていなかった。


稲田の長が、三鶴の長と組まなければ、ツウは村から出なかっただろう。



ツウを稲田から乱雲山へ。そのために遣わされたのが、オレ。そんな気がする。でも、ただの遣いで終わるつもりはない。


オレはツウが好きだ。ツウと幸せになる。たとえ祝辺の守に逆らうことになっても、変わらない。ツウと生きる。




『ほぉ、たいしたモノだな。あの歳で、そこまで。でも、諦めろ。オマエは、妖怪になる。妖怪は良いぞ。ヒサは、まぁ、何だ。受け止めてやれ。』



「コウ、止まれ。」


「はい。ヒロさん、この霧・・・・・・。」


「ああ、いつもと違う。この山で生まれ育ったが、初めてだ。妖怪の、良くない振る舞い。いや、ただの妖怪じゃないな。悪しき妖怪の企みだ。」


「悪しき妖怪?」



「乱雲山は厚い雲に覆われ、雷が走り、人を惑わす山だ。つまり、妖怪が多い。雲井神の使わしめ、ゴロゴロさまが束ねておられる。しかしな、墓場に葬られた妖怪が目覚め、悪さをすることがある。」


「悪さ、ですか。」


「長になった時、聞かされた。なかなか無いが、隠のとき。妖怪などが暮らす国や、妖怪の墓場へ、引き込むらしい。」



コウには、ジロ譲りの才がある。当人は『力なんて持っていない』と言うが、確かにある。何があっても、コウなら切り抜けるだろう。しかし、妖怪。それも墓場の妖怪なら・・・・・・。



「そうだ、矢光の長よ。人が妖怪に敵うことなど、有り得ない。コウはもらう。悪く思うな。」


・・・・・・え?


「コウ。コウ、どこだ、コウ。」


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