11-81 流されるな
ナゼだ、ナゼこうナッタ。
王母に騙されたのか? いや違う。天帝に反逆し、地獄に落ちた是一家を浄化した怪物を処罰するため、派遣されたのだ。思い出せ。
雷に乗って地上に落ち、木を二つに割いた。
ボッと燃え上がったが雨に打たれ、消えてしまったが落ち込む事はない。『もう一暴れ』そう思った時、何かに引き込まれ・・・・・・。
そうだ、ココはドコだ。洞窟か洞穴か。何れにせよ早急に帰還し、対策を講じなければ!
「足りぬ。」
ナニッ。
「外に出られたが、思うように動けん。」
何を言っている。
「オウボとやらは、他にも送り込むのか。」
無礼者!
「オウとは何だ。」
偉大なる歖王に対し、何だとは何だ。
「ライジュウはテンテイに仕える兵か何かか。」
・・・・・・。
「フッ、そうか。次の雨を待とう。」
良く分からんがライジュウは強い力を持っている。コレを多く取り込めば、真の身に戻れる。
この感じ、祝辺の獄あたりに閉じ込められたのだろう。
もう一つ、切り離されたのか。少し離れているがアチラは動ける。眠っているのは力を使わず、戦いに備えるため。
良い考えだ。
ゴロゴロゴロゴロ。
「ニャァン。」 トロケソウ。
ハッ! 気を確かに持て、流。
「渦風神、そろそろっ。」
ゴロゴロゴロゴロ。
「ニャァァン。」 オボレチャウ。
ハッ! 耐えろ流、奮起せよ。
「話を御聞きっ、くだっ・・・・・・ください。」
愛猫に快楽を与えるためダケに編み出された超絶技巧は、猫又の大妖怪をも蕩けさせる。文字通り『神業』の妙技。
日日の鍛錬の成果を遺憾なく発揮なさり、御満悦の体。誠に喜ばしい次第でアリマス。がソロソロ、ニャンコも限界です。
「ゴロゴロニャァン。」 モウダメェェ。
ハッ! 違うだろう流、流されるな。
「霧雲山へ流れる雲か、らっ。雷獣がっ。」
「そうか。でもね、流。ココは神成山。」
「それ、は、そうニャのです、がっ。」
ゴロゴロゴロゴロ。
「霧雲山には数多の神が御坐す。野呂神も野比神も、霧山神も御強いよ。」
「はい。けれど霧雲山は水が多く、長雨にっ、耐えられニャくなればっ。」
「崩れる前に大泉神、白泉神、靄山神の三柱が御力を揮われる。」
そうニャンだ・・・・・・って、違う!
「渦風神、お忘れですか。」
「ん?」
「雷獣は天獄の獣です。ウッカリ落ちるなら海の上、やまとに落ちる事はアリマセン。それが落ちたのですよ。」
「何かが起こったとして、霧雲山での事。」
「天獄と地獄から仕掛けられる事、責められる事も御座いません。けれど雷獣は天帝に仕える獣。霧雲山のゴコかに隠された何かに、力を加える事が出来ます。」
「山守の祝、か。」
「はい。」
山守には祓っても祓いきれぬ、清めても清めきれぬ呪いがある。その根が隠されていると考えるのか、流よ。
「分かった、許そう。白泉社を訪ねなさい。」
「ハイッ、ありがとうございます。」