表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
山守編
1028/1587

11-79 疑念


イヤだ嫌だイヤだ、ここから出せ。


狭い暗い、息が苦しい。どんなに叫んでも暴れても、ビクともシナイこのうつわ。残った力を残らず激しく打ち当てても傷一つ、ひび一つ入れられない。


悔しい恨めしい。ガラガラ崩れそうだ。






「オイ、聞こえているだろう。」


・・・・・・。


「何とか言え。」


・・・・・・。


ぬしの呼び掛けに応えろ。」



おのを切り取り植え付けた。


腰麻こしま四姫よつひめだった、何の力も持たぬ妖怪にも出来た事。アレはシクジッタが私は祝。上手うまく運ぶ、思うように進むハズ。






テイの、呪い祝の思い通りにサセナイ。


このまま動かず、力を使わないで待つ。どんなに禍禍まがまがしくても真っ黒でも、チラリと見たダケで消して無くせる強者つわものが現れるまで待てば良い。


きっとテイを、あのバケモノを片付けてくれる。




『落ち着け、ウロ。』


そうね。ありがとう、ヴァン。






地の中に開いた大穴に、雷を操る何かが潜んでいる。狙いは山守か祝辺、霧雲山か。


先見や先読の力を持つ守が騒いでいるが、外から来る娘だ。木菟ずくも鷲の目も、谷河の狩り人も隠そうとする。


木菟は野比、鷲の目は野呂。谷河の狩り人は従うが表向き。






「フッ。」


人の守は霧雲山の統べる地のおさおにの守は霧雲山の統べる地のたて。が、どんなに強い力を持っていても中から崩れる。


隠のときは知らぬがな。


「とつ守が笑った。」


ヤカマシイ!


「とつ守が睨んだ。」


ハァァ。


「とつ守が」


ゴンッ!


「ワァン、お尻が二つに割れたぁ。」


ゲンコツを食らわしたがな、ソレは違うぞ。


「尻は初めから二つに割れている。それより、みつ守。尻が痛いならナゼ頭を押さえる。」


「エヘッ。とつ守の声が聞こえナイの、どうして?」


「ん? あぁ、スミか。」



生き物の考えを読む力を持つスミにも、とつ守の考えは読めない。他の守の考えは読めるのに、ドウしたって読めないのだ。



十代は九代に望まれ、祝社はふりのやしろに入った。けれど祝辺より鎮森しづめもりで過ごす事が多く、人の守になっても隠の守になってもソレは変わらない。


今でも霧山神きりやまのかみの使わしめ、ホッホの羽を離さずに持っている。



「スミがね、言ったんだ。『あの羽には時を止めるか、時を超える力でも有るのか』って。」


モチロンそんな力は無い。


「スミ、出てこい。」


とつ守に呼ばれ、オロオロしながら出てきた。


「誰に言われた、何が狙いだ。」


「とつ守。霧雲山を崩す、崩そうと御考えか。」


「私は霧山の生まれ。山守が崩れると谷が埋まり、水が噴き出すでしょう。困るのですよ。霧山には人と、多くの獣が暮らしていますからね。」






山守と霧山の間には恐ろしく深い谷があり、風の渦が生き物のように動き続ける。


平良ひらとも離れているので霧山に入るには、腰に縄を巻いてから切り立った崖を下りなければ辿り着けない。



谷の底には氷のように冷たい水がゴウゴウと流れており、川面かわもを滑る風は鋭いつるぎのよう。


水に入れば足を取られ、熱を奪われるのだ。歩いて渡る事も飛び移る事も出来ないので、山越を下りて遠回り。


それでも命懸け。






「とつ守、その羽は何ですか。どんな力が込められているのか、教えてください。」


「霧山神の使わしめ、ホッホさまの羽です。力など有りませんよ。霧山を離れる時、いただきました。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ