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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
山守編
1023/1592

11-74 年の所為、かな?


野呂と野比が動き出す。


社を通して話し合い、鷲の目と木菟ずくが野呂で作戦会議を開いた。出席するのはモチロン忍び頭。


極秘任務なので当たり前、と言えば当たり前なのだが・・・・・・。






「話はドコまで進んでいる。」


木菟の頭が問う。


「谷河で生まれ育った子を集め、タエと似た姿をした女の子を見つけた。」


鷲の目の頭がニコリ。






忍びにしかになえない事を片付け、谷河社たにかわのやしろで打合せ。それから細かい事を話し合うため良山よいやまへ。



大蛇神おろちのかみ、茅野と良村よいむらおさ、谷河の狩り長、鷲の目と木菟。


飯野からは飯野神いいののかみの使わしめ、川亀すっぽんおにナガ。添野からは添野神そえののかみの使わしめ、犬の妖怪シバ。茅野神かやののかみの使わしめ、ヤノも駆けつけた。


雲のように見える人が居ないので、大蛇おろちは人にも姿を見せてマス。



ちなみにタエを守っている川亀の隠は元、飯野の社憑きシナ。野狐は元、茅野の社憑きフサ。犬の妖怪は元、添野の社憑きクル。



飯野神、茅野神、添野神の三柱は御考え遊ばす。『先読の力を生まれ持つ子、きっと他から守られるだろう』と。


けれどアッサリ攫われ売られ逃げ出して、心と魂に深い傷を負うことになった。


『人の事は人に』とノンビリ構えていたから、救い出されるまで三代も掛かったのだ。



タエの祖母も母も神を信じ敬い、心穏やかに暮らしていた。


生まれ持った力に溺れる事なく尽くしたのに、つらい思いをして苦しんで苦しんで、それでも恨まず憎まず清らに生きた。


我が子を生かすために逃がし、好いた男と共に戦って死んだ。



やっと幸せを掴んだ子を守りたい、けれど離れられない。だから多くの技やてだてを持つ巧みな社憑きに『守り札』と『社の大札おおふだ』を持たせ、放ち為さった。


母娘に絡みつく、悪しい全てを断ち切るために。






「母から娘、孫へ引き継がれた糸は太い。」


クルが尾を振り、力説。


「この歯でも切れなんだ。」


シナが項垂うなだれ、ポツリ。


「狐火でも焼けなんだ。」


フサがスッと尾を抱く。


「顔を上げよ。社憑きだった隠や妖怪が諦めず、力を尽くした事で判ったのだ。アレは嚙み切る事も引き千切ちぎる事も、焼き切る事も出来ぬと。」


「大蛇神・・・・・・。」


クル、フサ、シナが目を潤ませる。


「それに良く見よ、その悪しきモノを。」


仲良くまばたきしてから首を伸ばし、クワッ。


「ん?」


「う、すく。」


「なっている!」






幾ら国つ神の『守り札』や『社の大札』を持っていても、社憑きが社から離れれば野良のら。マルの力で清められ、守られている良山に入れない。


近くの御社に伺い、話を通していただく。


大実社おおみのやしろ大蛇社おろちのやしろから御許しを得なければ、ドンと弾き飛ばされるダケ。



やっと御許しを得て入山した川亀、狐、犬は目を疑う。


タエが良村の人と楽しそうに過ごしている。モリモリ食べてグッスリ眠り、コロコロ笑っている。その姿を見てポロポロ涙を流し、ワンワン大泣き。



タエが良山に入った事で、川亀の隠が本気を出しても噛み切れなかったソレが、妖狐が本気を出しても焼き切れなかったソレが、妖犬が本気を出しても引き千切れなかったソレがシュワシュワ泡立ち、マルに抱きしめられた事でシュルシュル細くなったのだ。






「やっと気付いたか。」


子が育つのは見ていて楽しいし、心がポカポカする。けれど『見たい』とは思わないアレは黒くて小さなカサカサと同じ。


「良かった。」


クルたちが声を震わせ、涙する。泣き虫じゃナイよ、涙脆いダケ。年の所為せい、かな?


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