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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
山守編
1019/1587

11-70 触らぬ神に祟り無し


山守の民が荒れても、騒いでも社の司が黙らせる。


山守でも他と同じ、社の司が人のおさ。いつもニコニコしているが怒るとスッと真顔になり、声もグッと低くなって恐ろしい何かを纏うのだ。


控え目に言ってコワイ。



山守社やまもりのやしろの皆が倒れても山守には祝社はふりのやしろ、人の守が居る。人の守が倒れてもおにの守になるダケ。


祝社には多くの継ぐ子が居るし、隠の守は生き物に姿を見せ、話す事も出来るから困らない。


数も多いので安心だ。






「フッ。山守社は祝を選ばず、テイを消して無くせる誰かを待つ事を選んだのか。」


野比の祝、タマがニヤリと笑った。


木菟ずく。野比は野呂と共に、良村よいむらから来る子を守る。今すぐ御伝えせよ。」


「ハッ。」


勤務明けの木菟が心の中で叫んだ。『忍び使い荒過ぎだぁぁ』と、泣きながら。




山守の呪い祝が封じられた事、祝を置かない事を知った野比と野呂の祝は考えた。何としてもタエを、良村から来る娘を山守と祝辺はふりべから守らなければイケナイと。




「祝辺の隠、とつ守に気付かれぬよう動かねば。」


野呂の祝、タタの目が据わる。


「鷲の目。良村から来る添野の娘、飯野と茅野の隠も憑いていると思うが。」


「雲からは何も。」


「そうか。・・・・・・谷河へ行き、その娘と似た子を連れ出すよう伝えよ。」


「ハッ。」



夜勤明けの鷲の目はスッと下がり、頭を空っぽにして野呂山を出た。と同時に空を見上げ、『眠い』と呟く。


タタには心が読めるが、その耳は遠くの音が聞こえるホド良くない。だから呟いた。叫ばなかったのではナク、叫べなかったダケ。


響いちゃうよ、山だもん。






「ほう、ソウきたか。」


谷河社たにかわのやしろの祝、ハヤが微笑む。


「茅野から良村に託された娘、タエと良く似た子。谷河から探せるか。」


「はい。」


夜勤明けの鷲の目は遠くからだが、マルと並んで歩くタエの姿を見た。その時の相棒は今、他の任務に当たっている。


タエのソックリさんを探すのでは無く、背格好が似た女の子を探すダケ。何とかなるだろう。






霧雲山に出入り出来るのは、霧雲山で生まれ育った人だけ。谷河の狩り人に救い出されても、御山に入る前に御許しを得なければイケナイ。


木菟や鷲の目に救い出されても同じ。谷河の狩り人に託され、御山に入るから。



タエをどのようにして霧雲山に入らせ、野呂に迎えるのか。細かい事は茅野、良村、野呂、野比、谷河で話し合い、決める。


飯野と添野に力添えを頼めば、祝辺に気付かれるコトなく進められるハズだ。






とつ守が鎮森しづめもりに入り、草木の声に耳を傾けた。


良山よいやまの守り、固いですね。」



山のアチコチに仕掛けられた罠は、忍びでも逃げ出すホド恐ろしいモノ。戦慣れしたつわものでもバタバタ倒れ、仲良く血塗れ。命が幾つ有っても足りない。



妖怪が逃げるのも当たり前。


犬や犲、狐など、多くの隠が暮らしているのだ。許し無く近づけば妖怪の墓場へ送られる。



大実社おおみのやしろ大蛇社おろちのやしろめぐし子つき。良村の犬は一匹で十人ほど殺せる、早稲わさの犬に育てられているトカ。」


早稲の生き残りが連れ出した犬。飼い主も強いし毒にも詳しいし、商いも上手いなんて。


「・・・・・・勝てませんね。」


諦めますか。いえ、見守りましょう。


良村は多くの隠れ里、村、国とも結ぶ強く、豊かな村。大蛇神も御坐おわすし、『触らぬ神に祟り無し』だ。


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