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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
山守編
1017/1586

11-68 心配事


祝辺はふりべから『祝のむくろを焼き、骨を鎮森しづめもりに葬る』と聞かされ、山守社やまもりのやしろの皆が驚いた。てっきり骸が戻ると、帰ってくるモノだと思っていたから。



祝から切り離されたテイはつぼに閉じ込められ、祝辺のひとやに繋がれた。


おにの守が目を皿にして捜し、見つけた歪みや裂け目。その全てに手が加えられ、前より強くなったのだ。


壺から出られたとしても、獄からは出られない。



山守と祝辺から揉め事が無くなり、穏やかになった。そう思ったのは山守社の者だけ。


祝辺の者は地に開いた大穴に隠れ住む何かがドコに居るのか、どんな力を持つのか。わざわいもたらすモノなら清められるのか、清められぬなら閉じ込められるのかナド、いろいろ考え動いている。






「騒がしいな。」


「あぁ。」


夜勤明けの鷲の目と、勤務明けの木菟ずくが苦笑い。






山守も祝辺も隠や妖怪の目が光っている事には気付いているが、見張られている事には気付いてイナイ。


忍びが忍んでいる事を気付かれるワケがナイって? それはソウですが違います。



野比や野呂を信じているワケでも、忍びに慕われていると思い込んでいるワケでもアリマセン。忍びを、山越烏や平良ひらの烏と同じように思ってマス。


全く違うのにネ。






「ヨッ。今、帰りかい。」


にこやかに現れたのは天霧山の雲。矢弦社やつるのやしろの祝に仕える忍びで、見えないモノを見る事が出来る。


「そうだよ。」


木菟がニコリ。


「野比の山で話さないか?」


鷲の目が野呂では無く野比の山を選んだのは、野呂には心が読める祝が居るから。


「良いよ。」






三人の忍びが仲良く、険しい山をヒョヒョイと下りる。


霧雲山のいただきは山守、中腹には野比や野呂など。ふもとは霧が濃すぎて、獣にしか暮らせない。



山守や祝辺から逃げた人が隠れ里を作ったとか、隠や妖怪が暮らす村が在るとか言われているが大嘘。根の国へ続く道とか、毒霧溜や掃き溜めならアチコチに。


だから麓に近づくのは、死を望む者だけ。






「木菟、眠いだろう。悪いね。」


「良いよ。で雲、何を掴んだんだい。」


「山守のおさがヨキの次の祝を、テイが消えて無くなるまで選ばない事を受け入れた。」


「へぇ。」


木菟も鷲の目も、山守社が祝を選ばない事は掴んでいた。けれどソコまで掴んでナカッタので、とても驚く。


「驚かずに聞いてくれ。」


雲が声を潜める。






なんてコッタイ。


山越ってダケでもアレなのに輪の外、地の中にある洞に隠とも妖怪とも違う生き物が隠れ住んでいる。今は眠っているが、いつ起きるのか分からない。


確かめようにもソコまで辿り着くには、ずっと息を止めて水筋を。それも流れが早い水の中を、縫うように進まなければイケナイなんて。



その生き物は日暮れに動き出し、水では無く地の上に雷を放てる? なにソレ怖い。


・・・・・・どうやって水筋を進んだんだろう。


魚じゃなけりゃ亀、かわうそか。真っ暗な洞で生きられるんだ、どちらも違う。となると蝙蝠こうもり、は泳げナイよな。いやソレよりも。






「これから良山よいやまへ行き、大蛇神おろちのかみに御伺いしようと思う。」


雲は木菟や鷲の目から聞いた話も御伝えする気だ。


「なぁ。山守に祝が居ない事、山守の皆が受け入れたのかな。祝辺に乗り込まなきゃ良いけど、どう思う?」


木菟に問われ、雲と鷲の目が見合う。


「とつ守がさ、悪そうな顔してボソッと言ったんだ。『荒れるな』って。」


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