11-66 分離成功
そんな!
でも、そうね。テイを山守の祝から引き剥がし、納める壺が手に入った。コレを使えばテイを、呪い祝を閉じ込められる。やっと、やっと。
喜ぶのは早いわ。壺は三つある、けれどシッカリ整えなくては。
分け離すのは難しく、とても危ない。隠は死なないダケで痛いのよ、苦しいのよ、のたうち回るのよ、隠でも。
「皆さん、聞いてください。」
人の守が隠の守を集め、作戦内容を伝える。失敗は許されない。
カク、カクカクカク。
「アギラメナイ。」
カクカクカクン。
「ジナナイ。」
カクン、ドサッ。
奪いに奪った祝の力が、あれダケあった祝の力が少ししか残っていない。全て使えば死ぬ、消える。何とかココから出なければ。
「ヴッ、バナゼ。」
この器の主は死んだ、死んだハズなのに離れられない。
「ナニヲ、ナニガ。」
コイツの狙いは私を清める事、消して無くす事。己の体がボロボロになっても、ガタガタになっても考えを変えない。
変えようとも思わない。
「ジンデダマルガァァ。」
ゴキッ。
とうとう首の骨が折れた。なのに聞こえる、頭に響く。
「諦めなさい、テイ。どんなに暴れても放しませんよ。」
「ギャァァッ。」
壁に頭を打ち付けたいのに、思うように動かない。首の骨が折れているから。
「オガジイ、オガジイダロウ。」
確かにオカシイ。なぜ話せる、叫べる、嘆ける。
「どんなに呪っても幸せになれない。どんなに奪っても満たされない。もう解っているでしょう、テイ。」
「ダマレ、ダマレダマレダマレ。」
「私は隠にはなれず、根の国へも行けないでしょう。でも良いのです。山守から呪い祝を消せる、皆を守れるのですから。」
「ジナナイ、ジナナイジナナイ。」
「死んだのですよ、ずっと前に。呪い祝となり、死んだのです。」
「ジナナイ、ジンデダマルガ。」
「死んでも生きたかったのですか。」
「アタリマエダ。」
「ならナゼ『祝辺の継ぐ子になりたい』と、社を通して申し出なかったのです?」
そうだ、そうすれば良かった。人の守が死ねば隠の守になる。人の守に選ばれなくても、認められれば社憑きに。
ベリッ。ベリベリベリ、ベリッ。ポイッ、キュキュッ。
「・・・・・・エッ。」
暗いのは同じだが狭い、狭すぎる。
ココはドコだ。オイ祝、何とか言え祝。居るんだろう、頭の中に居るんだろう。分かっているんだぞ。
フニャン。
「な、んだ。何だ、この体は。」
手も足も無い、黒いモヤ。ドロンとしているのに形が有る。
「瞬きも出来ない、だと。」
壺のようなトコロでクルクルと。
「壺の、中なのか。」
テイに体を奪われ、死んでしまったヨキ。骸を整えてから手を合わせ、ひとつ守が清めた。
呪い祝に乗っ取られ、その身に縛り付けたのだ。隠になれても、もう山守には戻れない。
「骸を山守に帰すか、焼いて残った骨を壺に入れて戻すか。山守に帰さず鎮森に埋めるか。皆で考えましょう。」
人の守が切り出した。