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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
山守編
1013/1592

11-64 祈りが呪いに、願いが禍に


テイの魂を封じ込める壺が三つ、出来上がった。狙った獲物を間違えず、シュポンと吸い込む優れ物だ。




大蛇神おろちのかみ。野呂山で、呪いを受けた鳥を食べました。」


「山守、いや山越か。テイはおのを切り取り、植え付けたのだろう。山越の谷で死んだのは、他から山守に連れてこられた人。思いが呪いに変わり、戻れないと気付き目指したのが野呂。白露湖へ飛べば輪から外れ、三日月湖も見える。野呂の上も通るからな。」


『呪いを受けた鳥を食べた』と御伝えしたダケなのに、凄い! としか言えない。


ひとやが歪んだか、祝辺はふりべうごめく何かが動き出そうとしているのか。・・・・・・急がねば。」


ウチの祝も言ってたな、『急がねば』と。野呂に戻ったら御伝えしよう。


にしてもココ、良いなぁ。肩も背も軽くなって、翼の先までピッカピカ。出で湯に浸かったみたい。


「私は、これにて。」


ペコリとしてスススと下がり、社を通って野呂社のろのやしろへ。






山守のテイが捕らえられた。その知らせはジワジワと鎮森しづめもりに広まり、おにに成り損ねて彷徨さまよう魂を揺さ振る。



「聞いたか。」


「あぁ。」


山守に目を付けられ、引き摺るように連れてこられた人たち。雨乞いや日乞い、病や何やを抑える力なんて無いのに求められ、死ぬ。


雨が降ったり日が照る事はまれに有るが、やまいや地崩れをドウコウ出来るワケが無い。どんなに祈っても願っても。



残されたむくろの扱いは二つ。望むようになれば葬られ、出来なければ鎮森に投げ捨てられる。


葬られても捨てられても同じ事。恨みつらみを募らせて闇堕ちするか、呪いに縛られ苦しみ悶えるか。


骸が山守にあっても、その魂は鎮森を彷徨い続けるのだ。いつまでも、ずっと。



「山守の地を腐らせても、直ぐに戻しやがる。」


「神サンよ、そんな力が有るなら助けてくれよ。」


山守の民は己と守りたい人を守るため、生き残るためにテイの手足となって連れ去る。身代わりにされた人たちは死に、その魂は鎮森に囚われたまま。






ピリッ、ピリリッ。


「またか。」


ボコッ。


「オッと。」


地がへこみ、木の根があらわになった。


「聞いたか、祝辺の獄が歪んだぞ。」


「らしいな。」


祝辺の獄に入れられるのは人だったり隠だったり、生き物に憑いた何かだったりイロイロだが、その全てが消えて無くなるワケじゃ無い。


幾年いくとせも責め苦を味わい、何も考えられなくなってける。獄と合わさって。



祝辺の獄が凸凹でこぼこしているのは、その壁や床が他とは大きく違うから。


祈りが呪いに、願いが禍に。光を闇が呑み込み、望みを絶たれた生き物が見るのは己。全てが暴かれ、ことわりを悟り知る。



「外の崩れがココまで届くとは。」


「ソロソロかな。」



鎮森は山守をグルッと囲んでいる。接しているのは鎮野、大泉、平良ひら、そして山越。


輪の外で何か起きているのか、ドコにドレだけ何が有るのか、どうすれば収まるのかも知っているが言わない。



山守が滅びても、誰も何とも思わない。


御山のいただきを守り清めるのは祝辺、輪を保つのも祝辺。人の守が居なくなっても隠の守が居る。隠の守は何をしても、何が起きても逃げられない。それが祝社はふりのやしろの隠。



「いつ気付くだろう。」


「隠のときには届かないから、すこし先だろうよ。」


クックック。


さかいからコッチなら手出し出来ない、いやシナイ。」


グッフッフ。




テイは殺し過ぎた。人だった時も、死んでからも。


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