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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
山守編
1012/1587

11-63 お届け物です


地が裂け、山守と祝辺はふりべに分け離された。


山守にも泉はあるが、祝辺に比べれば少ない。祝辺の泉は勢いが良く、水がドバドバ噴き出している。




「ピーさま。この鳥、三日月湖から飛んできたと。」


「ワカラン。がな、呪いを受けた小さな鳥が山守から、ソコソコ離れた野呂まで飛べると思うか?」


「難しいでしょうね。」


「水に恵まれている祝辺の、祝辺の守にしか出入り出来ぬひとや。水から水へと考えれば、どうだ。」






山越へ逃げた誰かが足を滑らせ、谷底に落ちた。


直ぐには死ねず苦しんで、山守の祝を呪う。呪いに食われて身動き一つ出来ず『鳥になりたい』とか『鳥になれたら』と願えばドウなる。


その誰かが祝の力を持っていたら。



ピーさまがゴックンされたのだ、ソレは無い。けれど、この鳥は呪いを纏っていた。






「呪いが宿った木の実をついばみ、水筋の上を飛べば。そう、そうだ。」


山越から白露湖しらつゆのみずうみへ、珠の湖から三日月湖へ。それなら野呂を通る。


「この鳥を初めに見つけたのは、ピーさまではアリマセンね。」


野呂神のろのかみに御教えいただいた。」


当たりだ!


「フッ、フフフフ。」


野呂は祝辺に人を送らない。ウチは社を通さなければ、どんなに困っていても受け入れない。だから考えた。


鳥になって助けを求めれば、いや違う! 違う違う違う。


「合わん。」


山守のテイが、いつ獄に入れられたのか分からない。けれど、少なく見積もっても六日。いや十日は経っているハズ。


「急がねば。焼きます、今から焼きます。壺を焼きますよ。まきわら、泥も忘れずに。」


継ぐ子には粘土ねばつちで作った壺、祝人はふりとには薪や泥、祝女はふりめには藁を持たせ、村外れにある焼き場へ。






藁の上に土器を置いて薪で囲み、蓋をするように薪を被せて藁を被せ、その上に泥を薄く塗ったら三人で火をつける。


だんだん火が回ってくるから、衣が焼けぬよう離れて見守る。


風にも気を付けなければ危ない。すっかり焼けて、火が消えたら焼き上がり。




「良い感じに焼けたな。」


冷めるのを待って取り上げ、ひびや割れが無いか確かめる。


「清めの水を。」


目で見て終わりじゃ無い。水を入れて漏れなければ、キチンと確かめられない。


「・・・・・・うん、皆も確かめておくれ。」


ポコポコとかプチプチとか聞こえたら、その器は使えない。


テイをスポッと入れ、閉じ込めるのだ。ほんの少しでも開いていたら、ソコから出てしまう。だから皆で確かめる。



焼き上がりを見て、水を入れて確かめてから耳をすませる。焼く前の器を一つづつ継ぐ子に持たせたのは、大人より耳も目も良いから。


五つのうち、音がしたのは二つ。残った三つを割れぬよう、藁を入れた箱へ。






野呂社のろのやしろで壺が入った箱を布で包み、結び目を咥えてフワリ。社を通って大蛇社おろちのやしろへ。



「ごめんください、お届け物です。」


包みをソッと下ろし、声を掛ける。


焼きあがった壺を持ってきたのは、尾被おかずきではなくピーだった。どちらもおにだが『割れ物を運ぶなら』と、体が大きいピーが選ばれたのだ。


「ホウ、もう焼けたのか。」


大蛇神おろちのかみ!」


出迎えは使い蛇か、めぐし子が飼っている犬だと思っていたピー。慌てて平伏し、プルプル。


「月の光を蓄えた粘土で作り、焼き上がった壺を御持ちしました。御納めください。」


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