11-61 防闇仕様の優れ物
「嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ。」
乗っ取った体から出られない。器から奪えるハズの力が奪えず、有るハズの祝の力が使えないのはナゼだ。
無くなった? そんな事はナイ。と思うが、それなら。
「ドコに隠した。」
山守の祝だ、弱くても生まれ持つ。祝の力を失うのは死ぬ時、生きているなら有る。どこかに隠しているに違い無い。
捏ね捏ね、捏ねコネ。
「エイッ。」
捏ねコネ捏ねコネ、こぉね捏ね。
「トウッ。」
平たい岩の上に叩きつけ、ツルツルした枝を転がしながら押し広げる。石器で細く切ったらソレをクルクル巻き、形を作ってゆく。
巻いた粘土がピタリと付くように、軽く押さえて整えながら。
「フゥ、こんなモンか。」
野呂のタタが祝の力を込めながら、セッセと作った器。味のある壺になりました。焼いているウチに割れるカモしれないので、あと三つホド作ります。
「さぁて、次つぎ。」
捏ね捏ね、捏ねコネ捏ねコネ・・・・・・。
止められるなら止めたい。あぁ、あんなにバンバンしたら土竜が逃げる。逃げるじゃないか。
「ピーよ、見回りは良いのか。」
野呂神の使わしめ、ピーは鵟の隠。
好きな食べ物は土竜と鼠。魂を美味しくパックンしたら骸を飼い犬に贈るので、野呂で飼われている犬にソレはソレは懐かれている。
担当は昼。前述の通り土竜と鼠が好物で、畑を中心に巡回。
夜担当の尾被も似たようなモノだが、畑を荒らす小動物を駆除してくれるピーは、隠の姿が見える人にも大人気。
「野呂神。私はガリガリになっても、飛べなくなっても務めを果たします。」
キリッ。
「そうか。ほら、鳥が畑を狙って居るぞ。」
「はい、行って参ります。」
ビュゥン。
空をクルクル回りながら獲物を捜し、見つけると首を下に向けてビュン。パクンと銜えて捕らえるのが鵟の狩り。鳶と同じですよ、ソレが何か?
口の悪い人は『クソトビ』なんて呼びますが、止めてよね。
捕って食べるのは野鼠や小鳥など。
平たい地から山の中の地にある林で生まれ、増えマス。お気に入りは林の縁。草原や畑など広いトコロに出て、枯れ木や杭などに留まってジィィ。
獲物を見つけたら飛び立って、狙った獲物に襲い掛かるのだ。エッヘン。なのに、なのに悪く言うなんて・・・・・・ピィィッ。
煩い? ピィと鳴くのが鵟です。だから私、ピーなんです。
野呂神が名付けてくださいました。ウフフ、良いでしょう。エッ、コロコロ変わり過ぎ。鳴いたり笑ったりで勤まるのかデスッテ!
バリバリ勤めてますよ、長く勤めてますぅ。
「ん、この感じ。」
ゴックン。
「モホロウ。」
ピーに食べられた鳥には、ほんの少しだが呪いが掛けられていた。
ピーは使わしめ、祝の力など無い。けれど勤続年数、百年越えの大ベテラン。その胃袋は防闇仕様で、羽毛越しでも清められる優れ物。
「フォロノファミ。」
呪い鳥を銜えたまま、神の御前へ。
「おや。」
いつもなら撫でてからニッコリ為さる野呂神。急ぎピーの腹に御触れ遊ばし、スッと清め為さった。
「鳥が呪われてって! それは真ですか。」
心を読める祝タタ。土器作りを中断し、クワッ。