11-60 姿が変わっても
明里は隠の国だが長は人、それも女だ。
里でも村でも国でも同じ。守りが弱くても暮らし易いから子が増えて、少しづつ豊かになる。
明里王は隠なのに物に触れられ、人とも話せる神で在らせられる。使わしめもソウなのは神の御力か?
明里は悪取神の御力で守られている。だから他から仕掛けられても撥ね退けるし、攻められてもシッカリ守れる強い国。
良村がある良山から遠く流れているが、社を通してドウコウする気は無い。
オレたちが付き合うのは人、神でも社でも無いからな。
「良村に忍びは居ないが、良村の人に『忍びと同じ事を』求めない。忍びが知らない事を知っているのは驚いたケド、隠さず伝えてくれた。」
雲がニコリ。
「南で戦が多いのは海が近いから。川を上って攻めてきても、ココに来る前に片付ける。」
月もニッコニコ。
「今すぐドウコウって事は無さそうだ。けど、椎の川には気を付けよう。」
梟もニッコリ。
「山守の呪い祝、テイはシブトイ。」
「そうだな。南で闇か何かを仕入れ、取り込めばドウなるか。」
木菟と鷲の目がポツリ。
「そうなる前に動こう。」
桧が言い切った。
「そろそろ潜り影が戻る。『耶万の夢』を作っている今井、久本。人が居なくなった井上、安井を調べると言っていた。」
影が微笑む。
「緋と謡、ウチが一人づつ送って悦、采、大野、光江、安を調べている。そろそろ戻るハズだ。」
毒嵓が言い、緋と謡が頷く。
「テイを閉じ込めるまで『祝の力』を持つ子を山から出さぬよう、戻り伝えよ。」
「ハッ。」
一同、大蛇に平伏す。
カクン。
「オカシイ。」
カクッ、カクン。
「何か、いや何もかもがオカシイ。」
祝辺の獄に入れられ死んだ、いや殺してきた人のナニカに責め立てられ、器が歪んで壊れた。
なのに動けない。
器の主であるヨキがテイに噛みつき、手足で巻き絡めて離さないから。
逃げたい、逃げ出したい。出たい、飛び出したい。放せ、離れろ!
喉から血が出るまで叫んでも、骨が砕けるまで暴れても放してくれない、離れない。どうなっている。
祝辺の獄だからか、隠になっても・・・・・・。
「ハッ、そうか。」
カクカク、カクン。
「隠の祝に、違う。触れられるから妖怪の、妖怪の祝になったのか。」
カクカクカクッ。
「ソウかソウか、アハハハハ。」
カクカクカクカク、ズルッ。
「やった、やったぞ。出られる、出られる!」
ドンッ。シュワァァ。
「ギャァァ。」
譬え朽ち果てても、消えて無くなってもテイ。ヌシの思うようにサセナイ。全て整うまで、私とココで待て。
「ニガサヌ、ニガサヌゾ。」
「放せ、離れろぉぉ。」
「テイ、ナゼノロウ。」
黒かった髪が真っ白に、艶やかだった肌はカサカサに。
「黙れ黙れ。喉が潰れたハズなのに、なぜ声が出る。」
「フフッ、ふふふふふ。」
山守社の祝人頭としてシッカリ務め、祝に選ばれた男は残された務めを果たす。
その姿が変わっても。