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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
山守編
1008/1590

11-59 血を流さずに戦うため


大蛇おろちから南へ行くのを許されてから、付き合いのある国を通してイロイロ調べた。



良村よいむらは子より大人が少ない。だから一人でも居なくなれば、それだけ守りが薄くなってしまう。


親から託された宝を慈しみ育て、大人になるまで守り抜かねば!



早稲わさの生き残りだ、言われるまま多くの命を。



早稲に奴婢ぬひは居ないが『早稲の他所よその』人と呼ばれ、酷い扱いを受けてきた。



剣も弓も扱えないのに戦場いくさばに放り込まれ、おのが死んだら思い人を、子を頼むと言い残して死ぬ。


何とか戻れても、守りたかった人が冷たくなっていた。なんてコト当たり前。



早稲から連れ出せた子は覚えている。


忘れたくても忘れられない、死ぬなんて有り得ない。だから他と結ぶ時、これでもか! というホドいろいろ調べ尽くす。


遠く離れた南の地、目と耳が足りないから出来るだけ多く集める。血を流さずに戦うために。



早稲と風見かぜみが確かめた事も聞けたから、信じられる話さ。


明里あかりおさは人だが王は神、それもおに神で在らせられる。人と話せる赤い目をした白いやまいぬが王に仕えているが、祝や妖怪の国守は居ない。



浦辺の港が整えられ、沖に舟が出るようになった。動きがオカシイ舟が海から松川へ入るが、それっきり。



試しにセンがカノシシの鞣革なめしがわをエサに近づき、浦辺を軽く調べて回った。


人と、人だと思う何かが暮らしていると聞いたノリが、ノリコを連れて向かって判った事は四つ。



松田の縄張りだった地が全て明里となり、大王は悪いモノを奪い、消して無くす力を持つ悪取神あとりのかみ


元は御犬社おいぬのやしろの祝で、里を滅ぼした松田を耶万やまに滅ぼさせるために死んだ。


明里は隠の国で、力を持たない合いの子が多い。


他の地では生きられない、生きにくい人を多く受け入れている。



良村の大人が集まり、これからの事をジックリと話し合って決めた。手始めにあきないを通して浦辺と結び、見極めてから明里と結ぶと。だから嘘では無くまことだ。


今は、良村と明里に付き合いは無い。






「浅木、良那なら岸多きした近海おうみも明里とは結んでイナイ。早稲は社の司が動いている。長やおみは気付いてナイが、狩頭は気付いている。確かめる気も動く気も無いな。」



シゲたちは早稲を出たが、カツも同じ『早稲の他所の』人。


好き嫌いに弱み、強み。黒子ほくろあざ、傷跡の場所まで知っているのは顔が潰れてもむくろで判るよう、互いに見せ合うから。


つまり、何だって御見通し。



「浦辺は滅ぶまで、加津と付き合いがあった。その加津が浦辺を通して、明里と繋がりを持ったらしい。」


ホエェ。


「明里は松田と違って戦嫌い、仕掛けないから岸多と明里の間はガラき。加津から東はナイ。社が強くなった耶万は守りを固め、外に目を向けなくなった。けど近海から大浦の間は、どうだろう。」






・・・・・・きな臭い、なんてモンじゃナイよ。


椎の川から明里に入れば命は無いが、そのまま川を上がれば何も起こらない。蛇谷の北でおかに上がり、ズンズン進めば幾らでも隠れられる。



近海と大浦の間にあるのは光江。


耶万の目が光っていても、少し離れれば陸に上がれる。加津と近海の間は清らでも、近海と光江の間。その先はガラ空きってコトだよね。そうだよね。



早稲も風見も戦好きだが、耶万との付き合いを変えた。とはいえ早稲も風見も戦場で生きられるつわものを、とても強い兵を多く育てる事が出来る。


早稲は三鶴と玉置に攻められてボロッボロになったのに、アッと言う間に力をつけたオッソロシイ村。


あの風見と渡り合える村の生き残りが、霧雲山の統べる地に新しく作ったのが良村。



・・・・・・どうしよう、戻っちゃった。考えろ、考えるんだ忍びだろう! ひねり出せ。






「椎の川を上がっても獣谷けものだにを抜ける前に力尽きるか、休んでいる間に獣に襲われて死ぬ。」


毒嵓どくらが涼しい顔をして、サラリと言い切った。


「椎の川と違って暴れ川は流れが早く、激しい。」


ひのが言い、他の忍びたちがコクンと頷く。


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