11-57 その力、底ナシか
良村と結んだり、社を通して繋がっている忍びは多い。
上木社の忍び、緋。厳樫社の忍び、謡。沢出社の忍び、影。矢弦社の忍び、雲。糸游社の忍び、月。嵓社の忍び、毒嵓。水月社の忍び、桧。見空社の忍び、梟。
野比社の木菟と野呂社の鷲の目は社を通さず、忍びの一つとして良村と繋がりを持つ事にした。
どちらも山守と祝辺を見張る忍び。万が一にも良村や良山を巻き込んだり、禍を齎す事になってはイケナイ。
そう考えた忍び頭が社の司に頭を下げ、キッチリ根回し。
祝に知られる前に脅し、コホン。はっきりシッカリ考えを伝えて認めさせたので、祝から横槍が入る事は無い。
「天つ国から注がれる月読尊の御力を含んだ、中つ国の粘土で作られた壺。それも祝の力を込められ、焼かれた壺だ。閉じ込められれば、どんなに強い呪い祝でも身動き出来まい。」
良山にある麓の家で開かれる忍びの議りには、良山の国つ神の一柱として大蛇神も御出で遊ばす。
良村には忍びが居ないので、村長のシゲか支えのノリ、カズが出る事になっている。この度はシゲが出た。
「大蛇様。タエを狙っている呪い祝、清める事は出来ないのでしょうか。」
「シゲ。山守のテイは化け物、人にドウコウできるモノでは無いのだ。人の世、隠の世の神にも清められぬホド禍禍しい。」
もしかすると化け王になら・・・・・・。けれど化け王はアンリエヌの王、巻き込めぬ。
「そうですか。」
この山は大国に仕掛けられても、攻められても守りながら戦えるよう、忍びでも逃げ出す罠がアチコチに仕掛けられている。
ケド生き物に触れられる隠とか妖怪とか、祝の力を持たないオレたちに防げるのか?
「マルとマルコ、良村も良山も我が守る。だからシゲ、死に急ぐな。命は一つ、長生きせよ。良いな。」
「はい、大蛇様。宜しくお願いします。」
忍びたちは思った。山守の前に祝辺を弱らせ、黙られなければイケナイと。
祝社の継ぐ子、その多くが親無しである。が、中には親から奪うように連れてこられた子も。
全ては己の定めだと受け入れた者が人の守に選ばれる。
他の祝女、祝人も同じ。祝の力、その強さより重いのは時。どれだけ長い間、己と向き合い続けたか。どれだけ耐えられるか、耐えられたのか。
人の守が死んで隠の守になるのだから、闇堕ちしたり呪い祝になる者は少ない。そうなれば直ぐ、祝辺の獄に放り込まれる。
とはいえ何時、何が起きてもオカシクない。
「山裾の地は穏やかになりました。けれど南の地、白い森の北で戦が始まりそうです。」
顔には出さないが、心の中で大騒ぎする忍びたち。
「耶万に滅ぼされ人が減った悦、采、大野、光江、安の生き残りが火種を撒き散らしています。」
その力、底ナシか。
「早稲と風見が結んだ事、耶万の社の司が戻った事が広まったのに、オカシイと思いませんか。」
シゲ、いや良村は何を掴んだんだ?
「浜木綿の川は岸多、鳥の川は早稲。明里と加津に挟まれた大磯川を抜けても、その先には風見。けど椎の川はアブナイ。実山は仕掛けられたり攻められなければ動かないし、谷西は小さいから守りに入る。椎の川から暴れ川に入れば、ココまで。」
ゴクリ。
「きな臭いのは椎の川から近い、耶万に狙われなかった村や国。手を合わせようと蛇谷に寄った谷西の人が、剣や矢をドッサリ積んだ舟が細い川に入るのを見たそうです。」
「エッ!」